「手の指先の関節」

手のDIP関節が異常になると、母指以外は、母指側に回転する遊びが大きくなります。

よく観察すると、異常を起こした爪は小指側に傾いて生えようとすることが多くなります。

爪は、打撲等で外力がかかると、それを避けるように生え、それが記憶されてしまうかのように同じ方向に生えてしまうという特性があります。

例えば、爪先を打撲して、内出血した後、爪の生え方が二重になったようになることが時々ありますが、どれだけ時間が経過しても、二重になった生え方は治りません。つまり自然治癒しないのです。

私も打撲の後、二年ぐらい足の母指が治らないのを経験しました。その後、二重になった爪を平面にするように爪を削ると1~2週間ぐらいで元に戻って、その後、二重爪になっていません。

手の爪は、手の使い方によって、慢性的に圧力が加わります。つまり外力が常にかかっていることになり、打撲の状態が続いているのと同じことになるのではないかと予測できます。

手の指先は、伸展して使うより屈曲して使うことが殆どです。

伸展して物を持つことはないので屈曲優位の使い方です。そして、指先の母指側と小指側のどちらかに力が集中する癖がついてしまいます。

DIP関節だけを観察すると、屈曲時に小指側で使ってしまうようです。異常を起こした指は必ずそうなっています。関節には、遊びがありますが、母指側より小指側の方が遊びが大きく癖がつきやすいということです。

リウマチで尺側変位するのは、DIP関節の傾きと連動してMP関節が小指側に傾くからなのではないかと考えると尺側変位の理由も納得できます。

また、この時、PIP関節は、母指側に傾きやすくなります。DIP、PIP、MPで逆方向に傾く遊びが起こるのです。力の伝達は、一つ異常な変化が起こると、それを補う形で動こうとするので隣り合う関節にも影響が出るということです。

当然ですが、その力は手根骨、腕関節、肘関節、肩関節、肩甲胸郭関節へとつながっていきますが、指先は、これらの末端にある為、その変化を観察しやすいという利点があります。

5本の指先からくる力は、体幹に近くなればなるほど、複雑に絡み合うようになるので、一定しませんが指先は、法則どおりに変化しやすいという特徴があるということです。

東洋医学の井穴は爪根部にありますが、井穴が様々な症状に著効することがあるのは、そういう理由があるからだと考えられます。

経絡と力の関係は切っても切れない関係にあります。東洋医学と西洋医学をわけて考えることは本来間違った考えです。

以前の動画でも示したように物理的な力のかかりかたによって経絡も変化していくので、複雑になりやすい体幹部に鍼を刺すのは難しく、末梢部に鍼を打つのは変化がわかりやすいということが言えます。

逆に言えば、末端の臨床は、初心者でも効果がでやすいとも言える訳です。

指先の観察をしっかりせずに、経絡を云々するのは、全くのお門違いです。力の出方と経絡の走行をしっかり理解し、臨床に役立てることが重要です。

また、指先の変化を観察し、問題点を改善することで、複雑に変化した体幹の問題を明確にすることもできます。臨床では明確になるところから調整し、不鮮明なところを鮮明にしていくことで目的を達成できるということです。

指先に起こったしもやけ

この動画は、指先に起こった、しもやけを調整するのに、この考え方を利用しました。一気に血流がよくなり、赤黒かった指先が綺麗な色になってきました。

しもやけも一種の血流障害ですから、何らかの物理的な影響があると考えると不思議なことでもありません。

左手の示指の母指側にのみに起こった、しもやけが改善していく様子をご覧ください。ただ、意識を使った頭皮針で取穴をしていますので、動画を見てもらうとわかるように直接、指先への刺激はしていません。

明確な診断と明確な意識をすることで遠隔部位を刺激するだけで、末梢の循環も良くなっていくという例です。意識を使った頭皮針は、高度な技術と脳神経系の理解が必要な為、ここでは割愛しますが、こういう事実があるということを知っているかどうかで鍼刺激の効果は全く違うということが言えます。

もちろん、指先から調整しても、ある程度効果は期待できますが、この方の場合、指先だけの問題ではないので、この方法で調整してみました。

前回の投稿記事でもわかるように意識は無意識の影響を受けて意識しています。自分が思っているより前の段階で、その行動は決まっているのです。これは意識の操作をする上で非常に重要なポイントです。

もちろん、ただ念じれば良いという訳ではなく、術者の意識の使い方によってこのような現象を起こすことができるかどうかが決まってきます。

人の思いというのは量子力学の二重スリット実験からもわかるように確率的に影響を及ぼすことがわかっています。その思いをどう伝えれば効率的に影響させることができるのかを訓練をしていくことで、頭皮に指先の異常を投影することが可能となってきます。

鍼灸では、耳鍼や高麗手指針、夢分流と言ったように一部分に全身を投影する技術もありますが、これは、術者がそれを起こすだけの能力があることでしか起こらない現象です。それを起こすことができるようになると一箇所の刺激が全体にも部分にも影響する刺激になっていくのです。

この動画はそれを証明していると思います。

御薗治療院 中村秀一 omisono@gmail.com
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