「意識」

 前回の記事で意識が大事だと言うことを書きました。意識によって身体の反応に変化があるということでした。

それでは、意識とは何なのか?

という疑問がでてくると思います。治療の話と少し違いますが、人間の意識には面白い特徴があります。

皆さんはベンジャミン・リベットという医師をご存知でしょうか?

1916年生まれで、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の生理学者でした。自由意志について研究した学者であり医師です。もっとも有名な実験で、人間には自由意志はないという衝撃的な発見をした人でもあります。人間の価値観を覆したという意味では、コペルニクスやダーウィンに並ぶビッグスリーとも言えます。

それではどんな実験だったのか内容を簡単に説明します。

脳波計と筋電計をつけた被検者に、椅子に座ってもらい、自分の好きなタイミングで手首を曲げてもらうという簡単な実験です。

その際、2.56秒で一周する時計のようなものを見てもらい、自分が手首を曲げようとした瞬間の正確な位置を後で報告してもらうというものでした。

もちろん、何度か練習をして、ちゃんとできるようになってから実験を行いました。

この実験からわかるのは次の3つの時間です。

1、この時計を見てもらって、位置を報告してもらうことでわかる手首を曲げようと思った時間

言い換えると意思を持った時間です

2、この脳波計からわかる脳波が活動をはじめた時間

補足運動野という身体を動かす時に活動する部位を計測しています

3、筋電計からわかる実際に手首が動いた時間

さぁこの実験の結果、どのような順番で手首を動かす動作が起きたのでしょうか?

普通に考えたら手首を曲げようと思う意思を持ち、次に脳波が活動し、その後で手首が動くという順番だと思います。

つまり、1、2、3の順番です。

しかし、実験結果は違っていました。

脳波が活動し、意思を持ち、手首が動いたということです。

2、1、3の順番だったのです。

この時間は、脳波が活動し、実際の手首を動かしたその間に意思を持ったとも考えられます。動かしたという実感をもったのは脳波が活動してからだったということです。意思が手首を動かしたことに気づいたとも言える訳です。

この実験が最初に行われてから50年たっていて、あらゆる科学者が検証しても結果は変わっていません。

それどころか最新の検査機器で調べると7秒も前から脳は活動していると言う驚きの結果まで出ています。

この実験で感じる感想は、それぞれの人によって違うと思います。

なるほどと思う人もいれば、

そんな訳はないと思う人も、

わからないという人もいる訳です。

ただ、そういう思いを持ったのは単なる知識や経験的知識による反射で、そう考えているだけです。過去の記憶や経験から考えたにすぎません。そう言われると更に納得できる人と、そうでない人がいるのではないかと思います。

反射の上塗りですので視点を変えてみましょう。

この実験は触診に大きな意味をもっています。意識が行動を認知する前の段階に焦点を合わせないと触診は行えません。なぜなら、知識や経験に基づいて行ったものであれば、触診のように感覚で感じる必要はないからです。触診はあくまでも、未知の世界を切り開く手法です。既知のものであれば、ワザワザ感じる必要はないからです。

巷には謎の症状があふれています。あらゆる検査をしても何が原因なのかわからない。結果的に精神安定剤を飲まされるということも起こっています。これは整形外科でも起こっていることです。そして、こういう症状の人は決して少なくありません。

長い間、捻挫が治らないというような症状も同じです。つまり、既知のものをいくら駆使しても、その理由は突き止められないということです。

そこで視点を変える必要がある訳です。

はじめて食べる食べ物は未知のものですが、人にどれほど美味しいのかを理論的に説明されても、実際に食べる瞬間までわかりません。感じるとはそういうものです。

知識や経験は既存のものであり、既存のものを超えられなければ触診をする意味は全くありません。

感じるというのは、この実験で言えば2番目です。しかし、脳が感じているのは、その前の段階であり、これに意識は気づくことができません。つまり意識の主導権を明け渡して、無意識に主導権を渡す必要があるということです。そこに知識が入ると、その感じる、という段階を捻じ曲げてしまいます。

苺は、すっぱい食べ物で全く美味しくないという知識を誰かから与え続けられたとします。食べれば、きっと美味しいことに気づくかもわかりませんが、何の知識もなく、食べて美味しいと感じるのとは微妙に味に違いがあるのではないかと思います。いわゆるプラシーボです。

少しのすっぱさでも強く感じてしまうかもわかりません。それぐらい人間は知識に左右されているということです。

これと同じで、触診を行って未知のものを感じとる為には、予備知識を完全にシャットダウンし、知識や経験が入り込む余地がない状態になっていなくてはなりません。

意識では感じとることのできない状態、つまり1番目の状態から情報を引き出せてこそ触診をする意味があるということです。

術者が触診で、無意識から情報を引き出そうと思ったら、知識を完全にシャットダウンする技術が必要です。これをシャットダウンする為には、考える余地を与えないという訓練が必要です。

感じるまでには、0.2秒程の時間の差があります。つまり、0.2秒以内に答えを出す必要があります。

それが知識や経験をシャットダウンする為に必要な理論的な時間です。

これ以上時間をかければ、必ず知識や経験が感じ方に変化を与えます。それでは正しい触診結果は得られません。一般的には、第六感の感覚と言えるのではないかと思います。

時間は触診において、とても大事な要素であり、時間を考えない触診は、自然に知識や経験の繰り返しになります。そして、それが知識の上塗りだとは全く気づかない訳です。これでは触診をする意味すらないということです。

ただ、時間を短くするというだけでは触診は上手くなりません。もう一つ重要な要素があります。それはリズムです。時間とリズムがないと触診を上手く行うことはできません。

前回の記事を読んでもらっただけでは、理解することは不可能だろうと思いますが、時間とリズムを訓練することで未知のものを引き出す能力が確実につきます。

時間とリズムを意識した訓練をし続けることで経絡や穴の存在を知ることができるようになります。これがわかるようになると経絡や穴の存在が教科書に書かれているものとは比べ物にならないぐらい多くの情報量を含んでいることがわかるようになります。

既存のものを超えて未知のものを受け入れるには勇気が必要ですが、その勇気は、なぜ、訳のわからない症状の患者さんがいるのか?

という疑問に答えようとしなければ決して答えを引き出すことはできません。

御薗治療院 中村秀一 omisono@gmail.com
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