介護政策・介護予防 最新動向レポート 8月

【介護・予防ニュース】2026年8月|月別まとめ

2026年8月31日までに公表・確認できた情報から、「介護保険改正」「介護予防」「フレイル」「サルコペニア」の重要な動きをまとめました。

今月の重要ポイント

2027年度介護報酬改定に向け、地域区分、介護人材、処遇改善、生産性向上などの検討が進展
夜間・緊急時対応、高齢者向け住まいと介護サービスの関係が論点に
 ・介護予防では、デジタル技術を現場支援へ活用する取り組みが進む
 ・オーラルフレイルと全身状態の関連を示す研究が公表

高齢者の支援では、疾患だけでなく脱水・低栄養・フレイル・生活機能を含めた評価が重要に

今月のキーワードは、
「人材確保」「地域差」「デジタルヘルス」「口腔機能」「個別性」です。

① 介護保険改正

主要トピック

厚生労働省は8月に、2027年度介護報酬改定に向けた介護給付費分科会を2回開催しました。

8月5日の第262回分科会では、次の項目が検討されました。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  夜間対応型訪問介護
  高齢者向け住まいへのサービス提供
  介護報酬の地域区分
  関係団体との意見交換の進め方

8月28日の第263回分科会では、次の横断的課題が取り上げられました。

介護人材確保と処遇改善
  介護現場の生産性向上
  高齢者虐待防止とリスクマネジメント
  災害時の業務継続
  介護現場のハラスメント対策

事実に基づく要約

2027年度改定の議論は、個別サービスの報酬だけでなく、人材確保、職場環境、安全管理、災害対応など、介護サービスを継続するための基盤整備へ広がっています。

定期巡回・夜間対応型サービスについては、独居高齢者や医療ニーズのある人を地域で支える機能が期待されます。一方、人材確保や利用者数、事業運営の安定性などが課題になります。

また、地域区分の議論は、地域ごとの人件費差を介護報酬へどのように反映するかに関わります。

重要:これらは審議中の内容です。2026年8月末時点で、2027年度の具体的な報酬単位や算定要件が決定したわけではありません。

実務への影響・活用

介護事業所では、改定内容が決まる前から次の点を点検しておく必要があります。

 ・処遇改善加算の配分方法と職員への説明
 ・ICT・介護ロボット導入後の業務時間と効果
 ・事故、虐待、身体拘束、ヒヤリハットの記録
 ・BCP訓練の実施状況
 ・利用者・家族からのハラスメントへの対応方針
 ・夜間・緊急時の医療介護連携体制

「機器を導入した」「研修を開催した」だけでなく、残業時間、直接ケア時間、事故件数、職員定着率などを使って効果を示せるようにすることが大切です。

情報元

・厚生労働省・第262回社会保障審議会介護給付費分科会
公表・開催日:2026年8月5日
[会議資料] https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75011.html

・厚生労働省・第263回社会保障審議会介護給付費分科会
公表・開催日:2026年8月28日
[会議資料] https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75439.html

・厚生労働省・介護給付費分科会一覧
更新確認日:2026年8月31日

[開催一覧] https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698_00022.html

翌月以降の注目点

 ・処遇改善加算の一本化後の検証
 ・生産性向上を報酬でどのように評価するか
 ・地域区分の見直し方法
 ・定期巡回・夜間対応型サービスの普及策
 ・高齢者向け住まいと外部介護サービスの適正化
 ・関係団体から提出される意見

② 介護予防

主要トピック

国立長寿医療研究センターは8月3日、「高齢者の健康支援に向けたデジタルヘルスの可能性」をテーマとするWeb講演会を開催しました。

講演では、健康長寿分野におけるデジタル技術の社会実装と、サルコペニア・フレイル対策への活用が取り上げられました。

事実に基づく要約

医療・介護・予防・生活支援の現場では、デジタル機器やオンライン支援を利用した新しい健康支援が求められています。

想定される活用例には、活動量の測定、運動実施状況の記録、オンライン運動指導、栄養状態の確認、継続的なモニタリングなどがあります。

ただし、講演会の開催自体は、特定の機器や支援方法の有効性を証明するものではありません。実際の導入では、対象者の選定、操作性、費用、個人情報保護、対面支援との役割分担を検討する必要があります。

実務への影響・活用

デジタル技術は、対面支援を一律に置き換えるものではなく、次のような場面を補う手段として有効です。

 ・通いの場に参加できない日の運動支援
 ・歩数や活動時間の確認
 ・訓練の実施忘れを防ぐ通知
 ・支援前後の活動量比較
 ・専門職が少ない地域での遠隔助言

高齢者によって、スマートフォンの操作能力、視力・聴力、認知機能、通信環境が異なります。本人だけに操作を任せず、家族や地域支援者を含めた仕組みにすることが重要です。

情報元

・国立長寿医療研究センター
開催日:2026年8月3日

[「高齢者の健康支援に向けたデジタルヘルスの可能性」]
https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/team/digital/dh-consortium/news/20260803.html

名寄市立大学コミュニティケア教育研究センター
開催日:2026年8月2日

[市民公開講座「フレイル予防はまさに地域づくり」]
https://www.nayoro.ac.jp/organization/crecc/centerjigyo/2026/2026-0802.html

翌月以降の注目点

 ・デジタル介護予防の継続率と生活機能改善
 ・ICTを使えない高齢者への支援
 ・通いの場とオンライン支援の併用
 ・個人情報・健康データの管理
 ・機器導入ではなく成果を評価する指標づくり

③ フレイル

主要トピック

東北大学は8月4日、残っている歯の数や口腔の潤いと、指先の毛細血管の状態との関連を示す研究成果を公表しました。

オーラルフレイルを、口腔だけの問題ではなく、全身状態を把握する入口として考える必要性が示されています。

事実に基づく要約

研究では、残存歯数や口腔の潤いが、指先の微小循環と関連する可能性が報告されました。

研究グループは、歯周病による炎症や体内の水分バランスが、口腔と指先の毛細血管の両方に表れている可能性を推測しています。

ただし、これは探索的な関連研究です。歯の減少や口腔乾燥が毛細血管の変化を直接引き起こすことや、口腔ケアによって全身の血管状態が改善することまで証明した研究ではありません。

実務への影響・活用

フレイル評価では、体重・筋力・歩行だけでなく、次の口腔項目も確認します。

 ・食べこぼしが増えていないか
 ・硬い物を避けていないか
 ・むせが増えていないか
 ・口が渇いていないか
 ・義歯が合っているか
 ・歯科受診が途切れていないか
 ・飲水量が減っていないか

特に夏季は、口腔乾燥を単なる口の問題とせず、脱水、服薬の影響、食事量低下なども確認する必要があります。

情報元

・東北大学
公表日:2026年8月4日
論文掲載日:2026年7月13日

[口腔機能と指先毛細血管の関連]
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2026/08/press20260804-05-nailfold.html 

・国立長寿医療研究センター
開催日:2026年8月3日

[サルコペニア・フレイル対策とデジタルヘルス]
https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/team/digital/dh-consortium/news/20260803.html

翌月以降の注目点

 ・オーラルフレイルと全身の微小循環との因果関係
 ・口腔ケア介入による全身状態への効果
 ・脱水・低栄養・服薬と口腔乾燥の関係
 ・歯科、栄養、介護予防をつなぐ紹介体制
 ・デジタル機器によるフレイルの早期把握

④ サルコペニア

主要トピック

8月は、国立長寿医療研究センターの講演会で、サルコペニア・フレイル対策におけるデジタルヘルスのエビデンスと今後の可能性が取り上げられました。

また、75歳以上の2型糖尿病患者を対象とする大規模医療データ研究が公表され、高齢者医療では生命予後だけでなく、フレイル、脱水、低血圧、身体機能を含めた個別評価の必要性が改めて示されました。

事実に基づく要約

75歳以上の2型糖尿病患者8,486人を対象とした観察研究では、SGLT2阻害薬を開始した群は、DPP-4阻害薬群と比べて死亡および末期腎不全・透析導入のリスクが低い関連を示しました。

一方で、心不全入院と心筋梗塞には主要解析で明確な差がなく、脳卒中はSGLT2阻害薬群で多く観察されました。

これは医療データを用いた観察研究であり、薬剤が結果の差を直接生じさせたと断定することはできません。また、サルコペニア改善効果を検証した研究でもありません。

実務への影響・活用

糖尿病のある高齢者では、血糖値や体重だけでなく、次の項目を継続的に確認します。

 ・体重の急な変化
 ・握力・立ち上がり能力
 ・歩行速度と転倒歴
 ・下腿周囲長
 ・食事量とたんぱく質摂取
 ・水分摂取量
 ・血圧低下やふらつき
 ・尿量の変化
 ・服薬後の体調変化

服薬内容の変更は医師の判断事項です。介護・リハビリ職は、脱水、食欲低下、ふらつき、活動量低下などの変化を記録し、医師・薬剤師へ共有する役割を担います。

情報元

・国立長寿医療研究センター
開催日:2026年8月3日

[サルコペニア・フレイル対策におけるデジタルヘルス]
https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/team/digital/dh-consortium/news/20260803.html

・総合研究大学院大学
公表・論文掲載日:2026年8月19日

[75歳以上の2型糖尿病患者を対象とした研究]
https://www.soken.ac.jp/news/2026/20260819.html

翌月以降の注目点

 ・デジタル支援による筋力・活動量改善の実証
 ・糖尿病とサルコペニア肥満の関係
 ・脱水や低栄養を伴う高齢者の服薬管理
 ・ウェアラブル機器の測定精度と継続率
 ・筋肉量だけでなく筋力・身体機能を含む評価

今月の総括

2026年8月は、制度面では2027年度介護報酬改定に向けた検討が、人材、処遇、生産性、安全管理、災害対応などへ広がりました。

介護予防では、デジタル技術を活用して継続的に高齢者を支える方向性が示されています。ただし、機器を導入すること自体が目的ではありません。生活機能や社会参加がどう変化したかを評価する必要があります。

フレイル・サルコペニア対策では、筋肉だけを見るのではなく、口腔、脱水、栄養、服薬、慢性疾患、活動量を一体的に捉えることが重要です。

現場で確認したい5項目

1. 処遇改善や生産性向上の効果を数値で確認しているか
2. 虐待・事故・災害・ハラスメント対応が現場で機能しているか
3. 口腔乾燥や食べにくさをフレイルの兆候として確認しているか
4. 糖尿病や肥満がある人にも筋力・身体機能評価を行っているか
5. デジタル支援を利用できない人への代替手段があるか

翌月以降に追うべき論点

 ・2027年度介護報酬改定に関する関係団体の意見
 ・処遇改善・生産性向上に対する具体的な評価方法
 ・地域区分と人口減少地域のサービス維持
 ・デジタル介護予防の実証結果
 ・オーラルフレイルと脱水・栄養状態の関係
 ・慢性疾患を伴うサルコペニアへの多職種支援

※本稿は、2026年8月31日までに確認できた公的機関、大学・研究機関等の公表情報を基に作成しています。介護給付費分科会の資料は検討段階であり、2027年度介護報酬改定の決定事項ではありません。

研究成果には観察研究や探索的研究が含まれ、因果関係が確定していないものがあります。制度や臨床上の判断では、最新の告示・通知・診療指針をご確認ください。