介護政策・介護予防 最新動向レポート 7月

【介護・予防ニュース】2026年7月号|月別まとめ

制度改正・介護予防・フレイル・サルコペニアについて、2026年7月31日までに確認できた重要情報を、現場への影響とともにお届けします。

【今月のポイント】

2026年7月は、次の4つの動きが注目されました。

  • 2027年度介護報酬改定に向けた議論が本格化
  • 人口減少地域で介護サービスを維持する仕組みを検討
  • 介護事業者を地域の介護予防資源として活用する動き
  • 疼痛・糖尿病・食生活などを含めたフレイル・サルコペニア研究が進展

今月のキーワードは、
**「地域差への対応」「介護予防の担い手拡大」「多面的評価」「疾患別の支援」**です。

 

① 介護保険改正

今月の主な動き

  • 施設系サービスについて2027年度介護報酬改定の議論を開始
  • 人口減少と介護需要の地域差に対応する提供体制を検討
  • 訪問介護・居宅介護支援などの議論内容を公開
  • 人員配置、事業所間連携、ICT活用が重要な検討課題に

何が起きたのか

厚生労働省は7月9日、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、特定施設入居者生活介護について、2027年度介護報酬改定に向けた議論を行いました。

続く7月23日の会合では、**「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制」**が取り上げられました。

都市部では介護需要の増加が見込まれる一方、人口減少地域では利用者と介護人材の双方が減るため、全国一律の人員配置・運営基準だけではサービスを維持しにくくなることが背景にあります。

なお、7月末時点では検討段階であり、具体的な報酬単位や算定要件が決定したわけではありません。

現場への影響

介護事業者

  • 地域人口や利用者数の将来予測が必要
  • 人材確保、稼働率、事業所間連携の再点検が必要
  • ICTや介護DXの導入状況が今後の評価に影響する可能性

ケアマネジャー

  • サービス不足地域では代替手段の調整が重要
  • 保険外サービスや地域住民による支援も含めた資源把握が必要

自治体・地域包括支援センター

  • 地域ごとの介護需要とサービス供給量の把握
  • 事業所間連携と介護予防資源の整備
  • サービス空白地域への対応策の検討

今後の注目点

  • 人材不足地域における人員配置基準
  • 訪問介護・居宅介護支援の報酬評価
  • 介護DX・LIFE・ICT活用の評価
  • 施設における医療連携・看取り・認知症対応

主な情報元

 

② 介護予防

今月の主な動き

  • 大阪市が介護予防を強化する「“すかい”プロジェクト」を推進
  • 介護事業者の地域貢献活動を介護予防に活用
  • 益城町が「通いの場マップ」と体力改善教室を更新
  • 歩行能力低下を早期に発見する一般向け情報を公開

何が起きたのか

大阪市は、介護事業者が実施する百歳体操、通いの場の支援、地域貢献活動などを、地域の介護予防資源として活用する取り組みを進めています。

訪問介護事業者による介護予防・重度化防止の取り組みを評価するインセンティブ事業も実施されています。

熊本県益城町では、地域の通いの場を探せるマップを更新するとともに、転倒不安や足腰の衰えがある高齢者を対象とした「体力あっぷ教室」を案内しています。

現場で活用するポイント

  • 通いの場と介護事業所、医療機関、リハビリ職をつなぐ
  • 「何メートル歩けるか」だけでなく、買い物や外出状況を確認する
  • 転倒不安や歩行距離の短縮を早期支援のサインとする
  • 教室参加者数だけでなく、生活機能の改善を評価する

高齢者に伝えたいこと

「歩けなくなったのは年齢のせい」と決めつけず、
歩ける距離が短くなった段階で相談しましょう。

歩行能力の低下には、筋力、疼痛、栄養状態、心肺機能、服薬など、さまざまな要因が関係します。

今後の注目点

  • 介護事業者の地域貢献活動を評価する仕組み
  • 通いの場から短期集中型サービスへの紹介体制
  • 猛暑による外出減少・脱水・低栄養
  • 介護予防事業の効果を測る評価指標

主な情報元

 

③ フレイル

今月の主な動き

  • 東浦町と国立長寿医療研究センターが長期縦断研究を継続
  • 不規則な食事時間と老化関連マーカーの関連を報告
  • フレイル高齢者の「健康情報格差」が研究課題に
  • 運動・栄養・認知機能を組み合わせた研究が進展

何が分かったのか

国立長寿医療研究センターは、東浦町と連携して、フレイルが進行・改善する仕組みを明らかにする「東浦研究」を進めています。

また、地域在住高齢者を対象とした研究では、食事時間が不規則な人ほど、生物学的老化に関連する血清GDF-15が高い傾向が示されました。その関連の一部には、食事の質の低さが関係していました。

ただし、これは観察研究です。食事時間の乱れが老化を直接引き起こすと断定することはできません。

別の研究では、フレイルのある高齢者は、家族、友人、ラジオ、新聞などから健康情報を得る割合が低いことが報告されています。

現場で活用するポイント

フレイルの早期発見では、次の項目を一体的に確認します。

  • 体重減少
  • 疲れやすさ
  • 歩行速度・転倒歴
  • 欠食や不規則な食事
  • 口腔・嚥下機能
  • 外出・社会参加
  • 健康情報の入手先
  • 家族や友人との交流

広報紙やウェブサイトへの掲載だけでは、支援が必要な人に情報が届かない可能性があります。訪問時や通いの場などで、専門職が直接説明することが重要です。

高齢者・家族への伝え方

フレイルは「年齢による仕方のない衰え」ではありません。
早く気づき、運動・食事・口腔・社会参加を見直すことで、改善できる可能性があります。

今後の注目点

  • 東浦研究によるフレイルの改善・悪化要因
  • 食事時間と食事内容を組み合わせた介入
  • 社会的フレイルと健康情報格差
  • 運動と栄養を組み合わせた介入の長期効果

主な情報元

 

④ サルコペニア

今月の主な動き

  • 神経障害性疼痛がある側で下肢筋肉量の低下を確認
  • 疼痛の改善と筋肉量回復の関連を報告
  • 2型糖尿病患者のサルコペニア肥満を研究
  • BMIだけでは筋肉量低下を見逃す可能性

何が分かったのか

国立長寿医療研究センターは、腰部脊柱管狭窄症で片側に神経障害性疼痛がある高齢患者260例を分析しました。

その結果、疼痛がある側の下肢では、疼痛がない側より筋肉量が少なくなっていました。また、手術後に疼痛が改善した人では、筋肉量の増加も確認されました。

この研究から、慢性的な痛みは活動量を低下させるだけでなく、神経由来の炎症などを通じて筋肉減少に関係する可能性が示されています。

また、2型糖尿病患者を対象とした研究では、サルコペニア肥満が注目されました。これは、体脂肪が多い一方で筋肉量や筋力が低下している状態です。

体重やBMIが高くても、サルコペニアが隠れていることがあります。


現場で活用するポイント

サルコペニア評価では、体重やBMIだけでなく、次の項目を確認します。

  • 握力
  • 立ち上がり能力
  • 歩行速度・歩行距離
  • 下腿周囲長
  • 筋肉量
  • 左右の筋力差
  • 疼痛の有無
  • 食事量・たんぱく質摂取量

疼痛がある人に対しては、単純に運動量を増やすのではなく、疼痛治療、栄養支援、活動量調整、段階的な筋力訓練を組み合わせる必要があります。


今後の注目点

  • 疼痛治療による筋肉量・筋力回復への効果
  • 糖尿病患者のサルコペニア肥満評価
  • BMIに依存しない身体組成評価
  • 運動療法と栄養介入を組み合わせた長期効果

主な情報元


今月の総括

2026年7月は、制度と現場の両面で、地域や個人の違いに応じた支援が重視された1か月でした。

介護保険制度では、人口減少地域でサービスを維持するための提供体制が検討されています。

介護予防では、住民主体の通いの場に加え、介護事業者や医療・リハビリ専門職を地域資源として活用する流れがみられました。

フレイル・サルコペニア対策では、筋力や筋肉量だけでなく、疼痛、疾患、食事時間、口腔、社会参加、情報格差まで含めて評価することが重要です。

現場で確認したい5項目

  1. 地域の介護需要とサービス供給量を把握できているか
  2. 歩行距離や外出頻度の低下を見逃していないか
  3. 食事量だけでなく、食事時間や食事内容も確認しているか
  4. 肥満や糖尿病がある人の筋力低下を評価しているか
  5. 支援が必要な高齢者に健康情報が確実に届いているか