足背・足底の痺れが残る要因 [Vol.30]
坐骨神経痛の患者において、中枢側の症状(腰部・臀部の痛みなど)が改善しても、足背部や足底部の痺れだけが改善しないケースがある。今回はその要因を、末梢神経の走行と関節のモーメントアームの観点から考察する。
1. 神経の基礎知識:浅腓骨神経と深腓骨神経
足背の感覚の大部分を担っているのは深腓骨神経ではなく、浅腓骨神経である点がまず重要なポイントとなる。両神経の違いは下表の通り。
| 項目 | 浅腓骨神経 (Superficial peroneal nerve) | 深腓骨神経 (Deep peroneal nerve) |
| 走行コンパートメント | 下腿外側コンパートメント | 下腿前側コンパートメント |
| 主要な運動支配(筋肉) | 長腓骨筋、短腓骨筋 | 前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋、第三腓骨筋 |
| 主な作用(運動機能) | 足関節の外反 | 足関節の背屈、足趾の伸展 |
| 感覚支配領域(皮膚) | 下腿下部外側、足背の大部分 | 第1・第2趾間の隣接する皮膚領域 |
| 終末枝の分岐 | 内側・中間足背皮神経に分岐 | 外側枝(筋枝)、内側枝(感覚枝)に分岐 |
2. 痺れが生じるメカニズム
前提条件
以下のような上位の構造的異常が土台にあることが前提となる。
- 骨盤の異常(多くはPit系。Pit側に第一ベースのレバーアーム現象を伴う)
- 股関節の異常(Hip-A、Hip-P など)
- 下腿の外旋
① 下腿の外旋
下腿が外旋すると、浅腓骨神経の走行距離(総長)が伸ばされ、神経に牽引ストレスがかかる。これが腓骨神経領域の症状を引き起こす要因となる。さらに、下腿の捻れ方によっては脛腓関節(下腿の骨同士の関節)が離開し、骨間膜(脛骨と腓骨の間の膜)の緊張を誘発することもある。
② 足関節の異常
浅腓骨神経は足関節の上を通って足背へ向かうため、足関節上面のモーメントアーム(てこの腕)が増大すると、神経がさらに強く引き伸ばされることになる。
③ 足根骨(ショパール関節・リスフラン関節)の異常
浅腓骨神経の走行路上にあるショパール関節やリスフラン関節に離開があると、同様にモーメントアームが増大し、痺れや痛みを誘発する原因となる。
触診のポイント
これらの神経の張りは、足部を底屈させたときに「張り感」として触知できるため、比較的容易に判定が可能である。
3. 部位別に見る関連骨
浅腓骨神経の走行を踏まえると、痺れの出る指によって関与する足根骨が異なると推察される。
- 母趾の痺れ → 第2楔状骨の浮上が関与
- 第3・4趾の痺れ → 立方骨の浮上が関与
坐骨神経痛というと仙腸関節や股関節など大きな関節に注意が向きがちだが、こうした足部の小さな関節におけるモーメントアームの増大も、症状に大きく影響することを念頭に置く必要がある。
4. 整復法(手順)
使用する固定具:S4足関節用ハイドロバッグ(対象:リスフラン関節、ショパール関節、楔舟関節)
手順① ハイドロバッグを当てる
足関節部(内果・外果を含むライン)の下にハイドロバッグを敷く。ベルト(面ファスナー付きの帯)をあらかじめ下に通しておく。
手順② 折り返して巻く
ハイドロバッグを挟んだベルトを折り返し、上から包み込むように巻きつける。巻き終わりは面ファスナーで固定する。
手順③ 面ファスナーで固定
ベルトの先端を面ファスナーでしっかりと固定する。
手順④ 環行帯の要領で巻く
環行帯(グルグルと一周させる包帯法)の要領でベルトを巻いていく。このとき、巻く位置は各関節ライン(ショパール関節・リスフラン関節・楔舟関節など)を骨指標で確認しながら決めることが重要である。位置がずれるとモーメントアームの調整がうまくいかず、効果が得られにくい。
整復法1:示指・母指による圧迫整復
固定したベルトの上から、施術者の示指と母指で上下(背側・底側)から挟み込むように圧力をかけ、そのまま中枢方向(下腿側)へ押し込むように整復する。