「経絡と関節」
経絡は存在しているのかという疑問があります。それに対しての答えは、ある条件下では存在を確認することができるといえます。
施術者に経絡を見ようとする意識もなく、ただ触れているだけなら肉体に触れるだけなので何も感じられません。しかし、意識を経絡に向けると明らかに触診に変化がでてきます。
ただ、経絡は教科書に書いてあるような規則正しいものではありません。どんな健康体の人であっても、どこかには不調があるはずなので、経絡にも必ず明確さと乱雑さが混在しています。これも波打つように強くなったり弱くなったりしているのが普通です。つまり実際には、教科書に書いてあるものとは違います。
この考え方をしないで教科書通りに経絡を追い求めても、明確な答えにはなりません。一部分でハッキリとしているように思える経絡も、その経路全体を追いかけていくと、蛇行したり、太さを変えたり、奥行きを変えたりしています。また、散らばるように乱雑になってわかりにくくなる場所もあります。
特に体幹部の経絡は、乱雑さが多くなります。手足の指先に向かうほど明確になりやすくなりますが、体幹で強くなり末端で弱くなるものもあります。ただ、井穴では、殆どの経絡が明確なので、井穴の治療が効果的だというのもうなずけます。
一般的には乱雑さのある経絡は絡脈と呼ばれたりしますが、絡脈は、一定の場所にあるのではありません。正経の触診をしていても途中で乱雑さが大きくなり経絡が明確でなくなる部分があります。つまり、絡脈と呼ばれる乱雑さは正経の経脈上にもあらわれるということです。このことから、私は絡脈という表現をせず経絡の乱雑さという表現に変えています。
大腸経の始まりは、手の示指であり、肘や肩の方に向かっていきますが、示指付近ではハッキリしていたのに肩関節の方にくるとフワッと散りばめられたように薄くなっていて、大腸経を確認できにくいことがあります。対側の大腸経では示指が弱く肩関節が強くなっていたりすることもあります。指先の大腸経と体幹に近いところでは右と左でバランスをとっていると言えます。
左で肩周囲の大腸経が強くなれば右で肩の大腸経は弱くなっていることが殆どです。鍼灸師は、人体の構造を、あまり考えない人が多いようですが、大腸経の左肩が強く、右肩が弱い場合、左が巻き肩になりやすく、右肩は巻き肩になりにくいという現象が起こります。そして、胸椎の上部では右回旋しやすくなります。動きと経絡は常に連動しているのを確認できます。
このことから考えても、同じ穴を左右に取穴するというのは合理的ではありません。右を取穴するのか、左を取穴するのかはとても重要であり、それを上手く刺激できるかどうかで効果に違いがあります。
まさに経絡は生きていると言えるのではないかと思います。教科書に書かれた経絡は、規則正しく整列している状態をあらわしただけで、生きている人間に経絡の図を当てはめようとしても無理です。多分、体系作りの為に無理やりくっつけた可能性もあります。
不調を訴える患者を観察すれば、経絡や穴が教科書どおりではないことはすぐにわかります。教科書どおりの刺激で効果を出せるのなら何の苦労もいりません。そうでないから、経絡や穴を触診する手法が必要なのだと思います。
御薗治療院 中村秀一 omisono@gmail.com
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