上肢と手の指の関係2

各関節の連動性

 前回は、関節には遊びがあり、連動し、それには法則があるということを書いてみましたが、第二指から第五指は、遊びがDIP、PIP、MPに回旋を起こしていますが、母指のの場合は、IP関節は外旋方向に遊びが多くなり他の指とは逆方向に遊びがでているのが正常です。また母指のMP関節は内旋、CM関節には、外旋方向に遊びが強くなっています。

第二指から第五指は末節骨、中節骨、基節骨3つの骨がありますが、母指には末節骨、基節骨2つしかない為にこのような遊びの法則になったのではないかと考えられます。遊びが母指と他の四指で違うことで、しっかりと握るということが可能になってくるのではないかと考えられます。

 更に面白いことに、伸展時には、母指から第五指まで全く逆方向に遊びが起こっています。屈曲と伸展では遊びの方向性が真逆になっているということです。逆向きの遊びが起こることによって容易に手の曲げ伸ばしが出来るのではないかと想像できます。しかし、力を抜いた位置では、内外旋の遊びは消失します。

遊びは、力を使った時(伸展や屈曲時)にのみ起こっていることがわかります。器用さと力強さを両立させる為ではないかと考えられます。

 第二指から第五指は母指と母指対立運動をしていますが、この遊びのお陰で器用な運動ができるのではないかと考えています。

つまり、この遊びがなくなると器用さがなくなり手先に不器用な動きが発生します。それが手の関節の問題につながっているのだと思います。

手の指先を広げてから、ゆっくり各指、各関節を曲げるようにすると、大きなボールを持った時のような形になるのが普通です。しかし、各指の関節の遊びがなくなり、手に何らかの異常を訴える人は、この動きが綺麗にできません。特に母指のMP関節が屈曲、IP関節が伸展しながら曲げようとしてしまったりします。

指関節の異常

異常を起こした指は、腫れたり固まったりすることで、遊びがなくなります。遊びがなくなると関節の自由な方向性が失われ制限されてしまいます。ヘバーデン結節のように、DIP関節が腫れて遊びがなくなると、一定方向にしか力がかからなくなるので、他の関節へ負荷がかかることが想像できます。もちろん、ヘバーデン結節だけでなく、腕関節や肘関節の異常によっても各指のDIPやPIP、MP関節の腫れが起こりますので、あきらかに各関節は連動していることがわかります。つまり、指先の影響は腕関節、肘関節、肩関節へとつながり、肩関節、肘関節、腕関節の異常は指先にも影響しているということです。

各関節の遊びが連動しているのなら、ヘバーデン結節や腕関節、肘関節の炎症の患者を単純に、症状のある部位のみが悪いと考えることは問題です。そして単純に安静にさせることが本当に治癒に役立つのか考える必要があります。

痛みはあっても積極的に正常な方向に遊びを作る動きをすることは、治癒を早める可能性があるということです。しかし、一般的な運動とは違い、あくまでも遊びを作るだけなので強い刺激は逆効果となります。動画を見てもらうとわかるように僅かな力で変化が起きているのがわかります。

この動画では力を使わずイメージだけで調整しています。イメージだけの調整の方が早く変化し、安全です。原因が薬指ではなく、母趾と示指のDIP関節の遊び異常、腕関節、橈尺関節の異常との複合でした。

なぜ僅かな力しか加えないかというと、無理やり力を入れようとすると痛みから逃れる為に代償運動を引き起こしてしまう可能性があるからです。代償運動は特に肩周囲に起こることが多くなります。

代償運動は、他動、自動運動の違いなく起こってしまいます。代償運動をしてしまうと異常な動きが習慣化してしまいます。その結果、更に関節に負担をかけ破壊してしまうことになります。

代償運動は、異常を起こして動かなくなった関節を守る為の動きなので一時的には必要ですが、続けると怪我につながります。いわば最終手段です。そもそも代償運動すら起こらないぐらいの弱い力で時間をかけ、丁寧に治癒させることが逆に早い治癒につながる訳です。急がば回れというのはこのことだと思います。

マラソンランナーが後半にフォームが乱れ、肩をあげて走っている姿を見たことがあると思いますが、足の異常を肩で代償している状態であり、肩が足の代わりをしている姿です。この状態が続けば最後は破壊しかありません。もちろん、マラソンランナーは、それも承知の上で肉体を鍛練しているので問題は起こりにくいと思いますが、一般人は取り返しのつかない怪我につながったりすることもありますので代償運動には十分注意が必要だと思います。

関節に異常があるからという理由で局所に力強く自動、他動の運動をしたり強いマッサージや鍼刺激で緩めようとすると更に代償運動を促進させてしまうことにもなります。

代償運動は最終手段であり、破壊の手前の運動だということを理解してもらい、ただただ運動しなさいという指導は、あまりも無意味です。

初心者の施術とベテランの施術の違いは、ちょっとした力の加減にあらわれてきます。見ていればすぐにわかります。ベテランは力でねじ伏せるような施術を行いません

今回のテーマは、関節の遊びを正常化させるということですが、遊びは関節可動域ではありません。つまり、DIP関節を屈曲、伸展する角度の大小とは違い、ほんの僅かな回旋の動きを正常方向に作ることが目的です。力を殆ど必要としません。症状が強ければ強いほど、意識のみを使う方が効果的です。もちろん、弱いだけの刺激ではなく、術者の意識が入り、ただ弱いのではないので効果が出ます。単純に弱い刺激だけでは効果はありません。

遊びを正常な人と同じ方向にすることで、うまく行えば一瞬で症状や関節可動域に変化があらわれてきたりします。

もちろん、長年のリウマチのように関節が完全にロックがかかり変形しているような場合、すぐに変化はあらわれませんが、日々の意識的な運動によって薄紙を剥ぐように腫れや痛み、動きが変わってくるのがわかります。

ヘバーデン結節でもバネ指でも、この遊び方向へのアプローチは同じなので、疾患名の差によってやり方は変わることはありません。

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