柔軟性

 最大可動域という概念ではなく、関節の遊びという概念で詳しく調査してみると、最大可動域が大きいから正常かと言えばそうではないことがわかります。

身体の柔らかい人は、逆に異常を起こしやすく、バレリーナのような関節可動域が大きい人が他の運動をすると関節は壊れやすいのがわかります。これは、キチンと関節の遊びを評価をしながら臨床をやっていればすぐに気づくはずです。

関節の柔らかさと強さは両立していなければなりません。つまり関節が柔らかい=健康ではないということです。もちろん固まり過ぎた筋肉や関節も、壊れやすくなるのは言うまでもありません。しかし、単純に緩めるだけの目的で無闇にストレッチを行うと逆に怪我をしやすい身体を作ってしまいます。

この場合、重要なことは、代償運動を考えて運動しているかどうかです。それは、関節が柔らか過ぎる人の場合も全く同じです。関節が柔らか過ぎると代償運動に気づきにくくなります。もちろんストレッチ自体が悪いと言うのではなく、代償運動を考慮しない無闇なストレッチは危険ということです。同じストレッチの運動を行っても意識を使うことで効果に大きな違いがあります。

私は鍼灸師なので、関節の専門家ではありません。しかし、どのような関節でも、必ず遊びがあることはわかります。逆に関節の専門家は、あまり関節の遊びについて考慮していません。

実は、遊びを正常化させることで力を使わなくても症状を改善させることができるのです。しかも一瞬で変化します。もちろん、それを意識していないと元に戻る力も働きますので治療だけでなく、自分自身で行うケアも重要だとわかります。

関節の遊びに気づき、運動を理解することによって、経絡の存在をより明確にすることができます。

この動画では、大腸経の触診をしています。腕関節のあたりで蛇行が強くなり、大腸経方向に動きが悪くなっていることがわかります。

 関節の可動域ではなく、関節の可動状態を観察してみると、経絡の蛇行部位と一致するというのもわかります。また曲池も肺経の尺沢側に変位しているので、肘関節にも問題があるのもわかります。この影響が上腕二頭筋や三角筋、大胸筋の緊張を引き起こして僧帽筋の緊張も引き起こしているのがわかります。

関節の遊びの方向性が隣り合う関節では逆回転の力がかかっているということは、力の方向性が螺旋状に捻れが起こっている方が伝わりやすいということを意味しています。赤ちゃんが産道を通る時も回転しながら出てくるように自然の営みなのだと思います。

この動画の例も腕関節では小指側に変位が大きく、肘関節では屈側に変位しているのもわかると思います。

関節だけでなく、経絡もそれに準じて変化していることが経絡の望触診によってわかります。

 経絡を望触診できるようになると、異常を起こしている経絡は、本に書かれているような正規のルートを通らず蛇行してしまうこともわかります。つまり、関節の異常と同じく経絡も蛇行するだけでなく、太さも深さも変化しています。

特に経筋系では、それが顕著です。また穴も関節の周囲には多く存在する訳ですが、その理由として、関節をまたいで経絡が蛇行していることが多いからだろうと想像できます。

関節は、運動だけでなく、経絡という目に見えないエネルギーの流れみたいなものと協調しているということです。そして経絡の蛇行現象が起こっている場所は、関節にとどまらず痛みや圧痛、症状も出やすくなり、その周囲の関節可動域も制限されていることが多いということです。

鍼灸師は関節の構造に弱い人が多く、関節の動きをないがしろにする傾向にあります。しかし、関節の動きや遊びと経絡は切っても切れない関係にあるので関節の動きをないがしろにするのは経絡を望触診できないと言っているのと同じです。それでは、鍼灸師として失格です。

その為にも経絡を望触診できるようになることが何よりも重要です。鍼灸師にとって、経絡を望触診できないのに穴や経絡と言うのはナンセンスです。望触診することができれば、WHOで決められた穴の位置が正しいと言えないのがよくわかります。そして、初心者とベテランで効果の違いが大きいという理由もわかります。

生きているのですから経絡や穴も変化して当たり前です。ベテランは、それを直感的に見極め施術するから効果が出るのです。それなら経絡の望触診の技術を身につければ初心者でもベテランに近づくことができる訳です。

関節の遊びを正しく観察することは、経絡を望触診する為の術者の感覚の訓練にもなります。まず物理的な誰にでも理解できる関節の可動状態を観察できるようになってから経絡の望触診の技術に近づけていくことで、生きた経絡を観察することができるようになってくるのです。

また関節の遊びを観察することは、患者さんに、その人にあった運動の方法を伝える為のヒントになります。これは、自己の運動法にもつながり患者さんの意識を高め治癒を早くさせることができます。

力任せの運動法ではなく、バランスをとることを学べます。意識を高め代償運動のないエネルギー効率の高い動きを習得することで健康状態を保つことができるようになっていきます。

健康状態というのは引き算です。一日のうちでどれぐらいのエネルギーを消費してしまうかで決まります。しかし、通常のカロリー計算の概念とは全く違います。エネルギーに片寄りがあれば、物理的にエネルギー消費が高くなります。片足で100m走るのと両足で走る時、どちらが片寄りが強くエネルギーが消費されるかはあきらかです。

バランスの悪い動きは、エネルギーを無駄に消費してしまいます。それは疲れが早くくるということを意味しています。つまり健康状態に大きな損失です。また、どれだけ栄養をとっても、それが吸収されなければ意味はありません。排泄するか貯蔵するかのどちらかにまわります。偏った運動は、内臓の機能にも影響を与えるのです。

一般的な栄養学は、栄養を摂れば吸収されるという考えです。だからこれぐらいの量は摂取しなさいという指導をする訳です。これには大きな疑問が残ります。

 吸収できてこそ栄養なのです。吸収される為には運動していなくてはなりません。胃も腸も運動によって吸収率が違うのです。だから東洋医学、特に日本の鍼灸では腹診を重要視する訳です。

御薗治療院 中村秀一 omisono@gmail.com
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