息苦しさを抱える方への接し方と訓練から自主トレへの促し方
1.息苦しさの心理面に及ぼす影響について
今回は息苦しさをテーマにした話をしていきます。呼吸と拍動は、命に直結するものなので、異常を感じた経験のある方は、「死」を身近に感じる体験を少なからずしています。
個人差がありますが、それがきっかけで新たに精神疾患を患う方もいますし、むしろ達観される方もいます。
どのように受け止めておられるのかを気に留めて接していく必要があります。言葉の選び方など、対象者に合わせたものを使いましょう。
画像1 パルスオキシメーターでの計測
2.息苦しさと生活動作や自立度に与える影響について
生活していくためには、身体を動かさなければなりません。そのような時に息苦しさがあると、動作そのものが止まったり、遅くなったりします。
スムーズに出来ていた頃と比べてしまうので、イライラが募ります。頑張るほどに息苦しさは増しますので、頑張れません。動作をゆっくりおこなうと、自分で何とか出来るので手伝ってもらうほどではありません。
介護保険で認定調査をすると一次判定での自立度は高く出て来ます。本人の頑張りや大変さが他者には伝わらない状態であることを把握しておくことも大切です。
3.息苦しさへの対応
息苦しさを和らげるためには、どのようなことをすれば良いでしょうか。呼吸は吸う時よりも吐き出す時が重要になります。
肺の中にある気体を外にしっかり出さなければ、新しい空気を吸い込むための場所が確保できないからです。肺の中に残る気体を「残気」といいます。この残気量が多いほど、新鮮な空気の入れ替えが困難な状態になります。
外気と肺までの空気の入れ替えを外呼吸といいます。肺の一番奥に肺胞という場所があり、そこから血管内に溶けて酸素が全身に運ばれ、二酸化炭素との交換を内呼吸といいます。内呼吸の結果、どのくらい酸素が体内に取り込まれているのかを調べるためには、指先に装置を挟みながら計測するパルスオキシメーター(画像1)を使用します。
呼吸器疾患に対する治療では、病院受診が必要ですし、運動そのものをしては行けない状態もありますので、注意が必要です。ここでは外呼吸についての対応をお伝えします。ポイントとしては、残気量を減らすことです。いかに吐き出すことを意識していくか。横隔膜の動きを出して、少ない力で大きな効果を得られるようにして行きましょう。
4.外呼吸に対する自主トレーニングについて
声を出し続けるというトレーニングが2種類あります。
1つめは、発声する言葉を1文字決めて、一息でどのくらい長く声を出し続けられるかを計測します。みなさんは60秒声を出し続けられますか?
2つめは、一息で数字を声に出して数えるというものです。数字は略さずに正確に言うことを条件として、滑舌も良く相手に聞き取りやすく行います。ちょっとしたサロンの隙間時間におこなうと盛り上がりますよ。80くらいまで言えますでしょうか?
体験した参加者の方から、1日1回おこなってカレンダーに言えた数字を記録していると教えてもらいました。自分なりに工夫されて調子の波を感じていることが理解できます。
先ほどの数字を速く正確に言うというトレーニングは、認知症予防としてのトレーニングにも活用されていたりして、道具を使わずに、人数が多くてもすぐに一緒に出来る所も優れていると思います。
5.腹式呼吸の必要性
呼吸の仕方には、横隔膜を使って腹部の動きがみられる腹式呼吸と、肋骨の動きが目立つ胸式呼吸があります。
呼吸を助ける動きとして肩や首が働くこともあります。陸上競技などで全速力したり、息が上がったりした時に肩が上下に動いているのは、呼吸を助けている動作です。
横隔膜が緊張することで、腹腔を押し下げて胸腔にスペースを作ることができます。1㎝押し下げることで約250㏄の体積が増えると言われていますので、横隔膜を動かすことで身体の内臓の位置関係へ影響を与えることが出来ます。
臥位や座位姿勢で、片手を胸に当て、もう片方を腹に当てた状態で呼吸をします。その時に腹に当てた手だけが動くように意識してみましょう。
画像2 腹式呼吸の確認(手を胸と腹に当てる)
仰向けに寝ながら行う時には、ボールペンなどの細長いものを、胸と腹に同時における場所に置いて呼吸をすることで、腹部の凹凸でボールペンを動かしてみましょう。
画像3 腹式呼吸の確認(ボールペンの傾き)
少ない力で効率よく呼吸が出来る、腹式呼吸をぜひ身に付けましょう。