【手関節捻挫と手根節捻挫】
次は有鈎骨の異常です。
有鈎骨の役割ですが鉤の部分の内側に深指屈筋、浅指屈筋の小指屈筋が走行しておりこの鉤に引っ掛かるようにして走行を外側に変化させています。
鉤の位置に異常が出ると深指屈筋、浅指屈筋の小指屈筋が鉤により牽引を受けますので小指、4指の伸展、屈曲障害を惹起します。
手関節を背屈した状態で小指、第4指を進展すると小指、第4指が伸び切らずにPIP関節部が屈曲した形になります、他動的に伸展させると指の掌側にテンションを感じMP関節部の背屈が制限されます。
また、握りこみの動作にも障害がでて拳を作ると小指と第4指が浮いたようになります。
これは伸展も屈曲も鉤の部分で小指の屈筋腱が引っ掛かり動きを制限していると考えられます。
次は有鈎骨の尺側、豆状骨その二つの骨をつなぐ豆鈎靱帯によってギヨン管が形成されており、尺骨神経と尺骨動脈、尺骨静脈がその狭いトンネル内を通っています。
有鈎骨、豆状骨間に微細な転位が発生しギオン菅というトンネルが崩れることで、尺骨神経が障害されて、小指、第4指に痺れが生じます。
上記の二つのタイプの障害の整復方法です。
1、ハイドロバッグで尺側から有鈎骨、豆状骨を上下に巻きアーチを保全する。
2、静水圧を加える。
3、静水圧を加えた状態のまま中枢方向に圧力を加える。
このように有鈎骨の鉤は重要な役割を持っていますが、手をつく動作、棒状の器具を使用する際などの動作で鉤の部分を刺激しますので良く障害される部分でもあるといえます。
次は難治性とされているTFCC損傷、三角線維軟骨複合体損傷です。
ここで考えて頂きたいのですが何故この障害が難治性とされているのでしょうか、TFCC損傷という名称ですがこれは三角繊維軟骨複合体という構造体の損傷ということを指し示していますがこれで病態を言い当てているとお考えでしょうか?
もし軟組織の損傷単独であるとするならば、何故きちんと固定をして軟組織の治癒機転を過ぎても痛みや障害が取れないのでしょう。
これは、構造障害のみならず機能障害を起こしていると考えるのが妥当でしょう。
つまり構造体が治癒していても三角骨、月状骨、尺骨などの間に微細な関節転移が発生しており、それが潤滑不全や関節の生理的機能軸の破壊を引き起こし回復できないということです。
手根骨間の関節は微細であり、また一つの手根骨がいくつもの関節面を持ち、おまけに一つの関節の中でも曲率が途中で変化するなど非常に複雑な構造をもっています。
そのためどの部分が障害されているのかという判断すら難しく、徒手整復の難度も高くなります。
しかし、静水圧を使用して整復する方法ならば、関節を構成する骨全体に均等にかつ垂直に圧力が加わり静水圧で包み込みますので異常関節面を認定できなくとも整復が可能です。
整復方法です
1 メディカル・ハイドロバッグを尺側から当該関節部を上下に挟み込むように巻きます。
2 患者は手のひらを正面に向けるようにして肘から前腕を少し立てます。
3 上下からアーチを意識して静水圧を加え、圧力を保ちます。
4 手関節を自動で掌屈させます。
5 掌屈状態のままで手関節を尺屈させます。
6 痛みの出る可動域まで動作をさせてしばらく静止させます。
7 4~6を数回繰り返します。
整復法動画です。
この動作をすることで月状骨、三角骨、尺骨間の関節内圧は上昇します、この状態で運動をすることによって、三角骨、月状骨、尺骨間の微細転位は整復され、潤滑の再生と生理的機能軸の再生が起こります。
TFCC損傷は非常に難治性であるといわれていますが、上記の整復法で良好な成績が得られており、問題なく治癒していることを申し添えておきます。