介護予防の始まりから、現在までの変遷
1.介護予防のはじまり
介護保険制度は、2000年4月に運用が開始されましたが、その時には介護予防給付はありませんでした。2005年4月等施行の改正の際に、介護予防の重視が述べられ、この時に地域包括支援センターが創設し、介護予防ケアマネジメントが行われるようになりました。介護を予防するということは、介護の状態にならないようにすること。介護保険の柱の1つである自立支援の取り組みをしっかり行って、結果を出すことが求められるようになりました。
2.地域支援事業の充実へ
その後の改正では、在宅で生活されている中・重度の方へのサービスが不十分であるため、施設サービスへの比重が高くなっている現状を是正すべく、複合型サービス(現:看護小規模多機能居宅介護事業所)の創設や、医療的ケアの制度化(介護職員によるたん吸引等)がされました。一方、介護予防給付に関連する改正では、2014年4月等施行の改正で、予防給付の訪問介護と通所介護を市町村が取り組む地域支援事業へ移行し、多様化する地域課題に向けて対応するような働きかけを求められました。
3.地域包括ケアシステムの構築に向けて
現在は、どのようなことが求められているのでしょうか。2021年4月施行の改正では、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する市町村の包括的な支援体制の構築の支援が掲げられるようになりました。介護保険制度は、3年を1期とするサイクルで財政収支を見通しながら事業運営を行っています。
その事業規模は、制度創設した2000年で、3.6兆円。10年後の2010年で8兆円。2018年で11兆円と拡大してきました。(図1)制度を持続させていく為には、自助の力で健康的な生活に努め、自分で出来ることは自分で行う。地域の中での繋がりや役割を求め、お互いに助け合う互助の力を育んで、効率の良いサービスの導入(共助)に繋げて行くことが求められています。
どのようにすれば、元気な人から、中・重度の方まで、役割を持ち活躍しながら、地域を支える住民として暮らして行けるのか。このことを念頭に置いて地域包括ケアシステムの構築に向けて、自分たちが出来ることを仕組化していきましょう。
4.私たちにできること
介護予防に携わっている方、これから携わろうとされている方は、自分が暮らす地域のことを知る努力を始めましょう。介護保険制度の主体となる保険者は市区町村です。各市区町村で第8期介護保険事業計画が発行されています。
人口や高齢化率、将来推計をはじめとして事業者数、新たに認可される事業者の数などもわかります。地区割なども頭に入れると、高齢化率などにも地域差が生じていることが理解できるようになります。20年前に比べると、飛躍的に対象者が増えています。(図2)全体像が把握出来たら、身近な所での活動に顔を出してみましょう。どのような取り組みが、どこで行われているのかを知り、その雰囲気を感じ取ることがとても大切です。
地域包括支援センターへ行って、地区を担当している生活支援コーディネーターさんと知り合うことが大切です。いまは住民の方の力をどのように引き出し、地域で主体的に活躍いただくかを考えて実践する時代になりました。地域をひろく捉えて、各地区の特徴をつかみ、実践している方の声が拾えること。このような準備が必要です。
5.今後に向けて
今回は、介護予防の始まりから、現在までの変遷を中心にお伝えしました。そして、いま求められていることについても私見を述べさせていただきました。次回からは、要支援者、事業対象者等のご利用者についての特徴や関わり方と、疾患別の特徴や訓練の進め方についてをお伝えします。
1.介護予防の始まりから現在までの変遷
2.要支援者の特徴と関わり方
3.自立・事業対象者の特徴と関わり方
4.痛みのある方への接し方と訓練から自主トレへの促し方
5.息苦しさを抱える方への訓練から自主トレへの促し方
6.すぐに疲れてしまう方への訓練から自主トレへの促し方
7.疾患別の特徴の捉え方と訓練の進め方(脳卒中)
【キーワード】バランス訓練、歩行の考え方、心の受け止め
8.疾患別の特徴の捉え方と訓練の進め方(関節リウマチ)
【キーワード】リウマチ気質、痛みとの付き合い方、活動範囲
9.疾患別の特徴の捉え方と訓練の進め方(パーキンソン病)
【キーワード】動きの特徴、身体と心の動き、家族関係
10.疾患別の特徴の捉え方と訓練の進め方(脊髄小脳変性症)
【キーワード】動きの特徴、ゴール設定、福祉用具と住宅改修
11.疾患別の特徴の捉え方と訓練の進め方(認知症)
【キーワード】軽度認知障害、フレイル、生活リハビリ
12.地域支援事業を通した住民との関わり方と、住民の力の引き出し方について