足底筋幕炎

前回は張力発生パターン①の原因について解説しました。

足底腱膜は踵骨結節内側から1~5基節骨の広い範囲で付着し内側線維束・中央線維束・外側線維束の3つの線維束で出来ているわけですから、①のパターンだけで発症するわけでは有りません。

私は少なくとも5個の足根骨の関節捻挫パターンと、足関節の捻挫が足底腱膜炎の発症に関与していると考えています。

①のパターンでは狭い靴を履いた際に摩擦による引き上げ力により、第一中足骨の回外内反が発生し足底腱膜の内側の総長が長くなり、腱膜の張力亢進が発生します。

同様に靴の摩擦による引き上げ力が第五中足骨側に作用し、第五中足骨の回内外反が強まった場合④の部分の総長が長くなり張力亢進が発生します。

①と②は同じ発生機序になりますが、第五中足骨は第一中足骨に比べてアームが短く、回外内反の転位の量も少ないため強い緊張を起こしにくいといえます。

したがってこの部分の痛みに遭遇する頻度は少ないのですが、④の部分に足底腱膜の緊張が発生し痛みを訴える患者は確かに存在します。

この場合第五中足骨の回内外反転位の整復と共に、第一中足骨の回外内反転位、第二中足骨から第四中足骨を含むリスフラン関節の潤滑獲得と安定を図る処置が必要になります。

 次に③の部分踵骨結節内側の足底腱膜付着部付近に張力亢進の発生と疼痛が発生するパターンです。

この部分に張力亢進がある場合、距踵関節内側の載距突起付近や、外側の関節裂隙に圧痛や違和感を認めます。



これは、距踵関節に不安定性が生じ踵骨の外反を起こしていることを示唆しています。

原因としては、踵骨の強打、ジャンプ運動の着地時の衝撃、下腿三頭筋の筋緊張による牽引力、墜下歩行による踵骨への反復する衝撃等が考えられます。

踵骨がわずかに外反することで足底腱膜の踵骨付着部付近の張力が亢進し、発痛します。

この状態が長期に続けば牽引応力により踵結節内側の腱の付着部に踵骨棘が形成されることになります。

また、距踵関節での関節転移によるモーメントアームの増大は、①の第一中足骨によるものより小さいために踵骨の付着部から土踏まずにかけての短い範囲での張力亢進を引き起こします。

この部分の張力亢進を除去するためには、距踵関節の整復が不可欠になりますが、距踵関節は内側の関節面は距骨の三角形の凹面に、踵骨の凸面がはまり込み、外側関節は距骨の凸面に踵骨の凹面が関節していて、一見して複雑かつ強固で非常に転位を起こしにくそうな関節形状になっています。

単純に踵骨から圧力を加えてもおいそれと整復できるものではありません。

実際、距踵関節が捻挫し微細な関節転移を起こすという概念すらないのではないでしょうか。

距踵関節はメディカル・ハイドロバッグでの整復法を構築するうえでも、何回も検討しなおした関節です。

現在、最も整復効果の良い方法として、踵骨側からサポータータイプのハイドロバッグで関節面全体を覆い、足底より丸形のハイドロバッグで圧力をかけて合力で整復する方法をとっています。

この方法をとれば内側、外側の関節部からと、足底からの関節全体の潤滑感と整復感を感じ取れるために診断と同時に整復も出来る方法となっています。

距踵関節の微細捻挫は③部分の足底腱膜炎を引き起こすだけではなく、アキレス腱炎、アキレス腱滑液包炎、踵骨痛の原因となることも追記しておきます。

実際の整復方法は動画をご覧ください。

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