☆学校長トップインタビュー

『学校法人呉竹学園 東京医療専門学校は、 学生達の未来に責任を持つ学校です!!』

 約100年という長い歴史を誇る学校法人 呉竹学園 東京医療専門学校は伝統ある東洋医学の礎を脈々と守り続けている学校であり、その気高く尊い精神は今後どのように社会が変化しようとも盤石で揺るぎないものである。

また多様な制度を提示・活用する東京医療専門学校は、生徒に多くのサポートを行い、エールを送ることで、多大な社会貢献を行っている。

その東京医療専門学校・齊藤学校長に学校のコンセプト等を教えていただいた。

―コロナ禍において貴校がとられた対策等について

 それはもう、大変でした。今年の3月に卒業した学生達は2年生の時には既にコロナが発生しておりましたので、その者達を考えてみると、半分とまではいきませんが、学校に相当な日数来れておりません。

ただし、実技教育に関しては、出来るだけ学校に来てちゃんと実技を行いました。密を避けるという目的がありましたので、座学に関しては、初めの内は教員が作った教材を一方的に流していましたが、それでは教育効果が上がらないだろうということで、途中から教員の問いかけと学生側からの質問を受けられるような双方向の形に変えました。

また座学だけの日、実技のみの日という形で時間割を変える等、対応しました。やはり実技の登校日に質問を受けたり、学科も含めてそういう風な形で進めていきました。

いつもであれば本校は、毎年4月に入ってから体育祭を開催しています。その目的は、クラスメイト間の交流を深めることであり、体育祭を開くことによって一気にクラスの結束が高まるからです。それが出来なかったクラスでしたので、最初はクラス間の人間関係はちょっと薄いような感じがあったかもしれません。

しかしながら実技の授業では毎回人を替えて行う取組み表を作成して行っておりましたので、振り返ってみると、遅れこそはしましたけれども友人関係の構築は出来ていたと思います。資格を3年間で取って外に出すということは、特に心がけていました。

ただし、本校のはり灸科に関しては、学び直しのための人達が多く、社会経験をした人達が殆どです。柔整は殆どが高校を卒業して、直ぐに入学した人達です。特にはり灸科に関しては年齢が高かったりしますので、親の介護を行っている人達も結構居ましたし、高齢者と一緒に住んでいる者も多く、その人達の中の何人かは学校に来ることによって、通学途中の感染を考えて、学校に来れなくなって、そのまま1年間休学することになったりしましたが、今の状況を見て復学という人もおります。

また本学はダブル免許、トリプル免許ということで看護師や薬剤師がいっぱいおります。東大病院や慶応病院が近いということもあり、其処の看護師、薬剤師をしながらはり灸科に学びに来ていました。

しかし、その人達が病院からの指示があり、〝病院と自宅の往復以外は寄り道禁止〟ということになって、学校に来れないということが起こりました。その人達も非常に苦しみましたし、我々のほうも苦しみました。

その者達に関しては、丁度授業をオンラインという形で行っておりましたので、家でも授業を受けることが出来ました。従ってギリギリの日数で卒業できたということもありました。

本当に皆さん頑張ったと思います。その間には、解剖見学実習もダメになりましたし、先ほど言った体育祭も中止、学園祭も出来なかったというのはあります。病院の中でも辛い思いをしながら、自分の意志で夜間部に通っているけれども、それすらも叶わないという辛い経験をしました。

―少しコロナも落ち着いてきたような感じはしますが、対応策は変わりましたか?

いま本校では、学校に入る時には、事前に携帯電話で体温を必ず入力すること、また学校の玄関でも体温を測っていますし、絶対マスクは外さないという条件の下で行っております。

授業に関しては、今年4月にスタートした時点からオンラインは一切行っておりません。今年の1年生は最初から通常の授業ですし、2年生・3年生も喜んでいます。図書館も普通に運営出来ています。

本校の授業は、9時半から始まって12時40分で殆ど終了します。その後は、本校の特長の1つでもあるゼミに出席します。本校には教員が大勢おりますので我々教員の持っているスキル・技術提供をする形のゼミの形式をとっており、〝自分たちで好きなものを取ってやってください〟という自由なスタイルで行っていますが、去年はコロナが酷い状況でしたから殆ど出来ておりませんでした。

今はそれも一部スタートさせています。例えば、お灸を一緒にやるようなお灸の同好会だったり、中医学のゼミであったり、そういったものが普通に提供出来ています。

―東京医療専門学校は間もなく100周年を迎えるそうですが、建学の精神や特徴についてお聞かせください。

 呉竹学園は、2026年で100周年を迎えます。本校は、大正の創立より一貫して「時代の流れに則した、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師の育成」に携わり、東京医療専門学校(東京都新宿区・渋谷区)、呉竹鍼灸柔整専門学校(横浜市港北区)に続いて、平成21年には呉竹医療専門学校(さいたま市大宮区)が設立されたことで、学園全体の専任職員数は100名を超える規模となりました。

 本校の建学の精神については、患者さんに寄り添える医療人を育てていくということに尽きる訳ですが、キーワードは「多職種連携を意識した医療人」を育成していくことです。

 つまり、はり灸師・柔道整復師だけが単独で医療を行うとは思っておりません。多職種の枠組の中に入っていくためには、東洋医学という言語だけでは入っていけません。しっかり西洋医学で説明が出来ること、そして所謂西洋医学的な検査法を用いて評価が出来るように理論構築を行っていきたいと考えております。

 東洋医学の体系的教育機関として次世代の担い手を育成してきた本校では、「基本的臨床教育の徹底」「教員・講師陣の充実」を教育のポイントとしています。

反復される基本練習により真の技術を身体で覚えていくことを重視し、総合的なカリキュラムに基づいた高度な知識や技術の修得を行います。日々の実技授業や充実した臨床経験を積みながら、それを確かな手で支える教員・講師陣のスキルを大切な教育資源ととらえ、常に指導体制の構築・強化を図っています。 

―「呉竹学園教育センター」の内容について、お聞かせください。

 「教育センター」は本校が持っているものです。先述しましたように東京校があり、横浜と大宮に姉妹校がありますので、その全ての教員を対象に教員を育てるためのセンターで、様々なテーマについて全員が集まって討議や発表をしながら教育のスキルを上げ、教員としての意識を高める所です。

―臨床実習についてはどのようにされていらっしゃいますか?

 4年前に法律が変わり、卒業までの間に臨床実習を4単位に義務付けられました。1単位が45時間ですから、付属施術所以外の所で180時間の実習を行わなければならないとなりました。

しかも本校の場合は、1年で1単位、2年で1単位、3年で2単位ずつ外部に出しています。それについても、「臨床教育研究センター」が臨床実習に特化して、コントロールしています。何所にどういう治療院があって、其処ではどういう技術を持って行っているというような、もし学校が期待していることとマッチするのであれば、その治療院と契約をするという形で行っています。

いま本校は約140施設と契約をしています。140施設の内訳については、はりきゅう整骨院で約65軒、はりきゅうマッサージで約30軒と提携しています。病院は約10機関、スポーツ施設が約5施設、介護施設が約10施設です。それくらいの所とやり取りを行っていますし、やはり其処に携わる専属の専任教員が居りまして、いつもコントロールしている訳です。

 また本校では、介護施設であるとか、スポーツ施設、医療機関等、多職種連携を目指していますので、そういった所に積極的に出すという形、其処が本校の一番の売りだと思っております。やはりコロナ禍になった時に、そういった施設は外部の人を受け入れないことになってしまいましたので、我々としては非常に苦しかったです。

それならばと写真やビデオ等を用いて、教えていただくスタイルで行う等、苦労も多々ありました。

卒業前の臨床実習は最終的には看護師さんとか理学療法師さんみたいに、卒業年度の最後の年は殆ど病院で実習という格好にならないと私は多職種の中に入れないと思っています。やはり病院実習や介護施設の実習を多職種と同程度に行っていなければ、同じステージに立てないと考えています。

―いま卒業生の方はどのくらい病院等に勤務されていますか?

 結構勤務しています。例えば今年は、先述しましたように140施設の中の100施設位の所で研修していますが、そのままその施設に勤めている割合は約4割です。

学生時代お世話になって実習させて頂いた治療院に就職している人は約3.5割です。はり灸の科は1回社会人を経験してきている人が多く、結構年齢が高かったりしますから、やはり我々が力を貸してあげないと中々難しいところもあります。

本校は専門学校と称しておりますが、正しくは「職業実践専門課程」といって、ワンランク上の課程で、現在は専門学校の中の3割ほど「職業実践専門課程」があります。

つまり社会が求めている、業団が求めている人材を育てている学校ということで文部科学省が専門学校の上のランキングに位置付けているのです。

 しかも「外部評価委員会」といって、業団のトップであるとか、卒業生の代表であるとか、そういう人達が集まって作られた評価機構があり、〝我々はこういった教育活動を行いました〟〝その結果こうなりました〟という報告書に基づいて審査評価が行われております。

その「外部評価委員会」にも本校は認定されています。その他に80%以上の者達がしっかり就職していないとダメという決まりもありますので、それを維持していくためには、やはり出口の部分に力を入れなければなりませんし、生徒の努力は勿論ですが、サポートする必要があります。

―そういった学校側のサポートは大事ですね!

 もう1つ、ハローワーク所謂雇用保険ですが、会社に2年以上勤務した人達が学び直しをする「専門実践教育訓練給付金」というのがあります。2年以上雇用保険のある企業に勤めると3年間で168万円を受けられるといった人達が、本校にはいっぱい入ってきますので、それもあって社会人が多くなります。

これについては何所の学校も出来るのではなく、3年間で80%以上の学生が卒業出来ていなければ受けられません。加えて本校は、学校の単位で認定をもらうのではなく、科毎に殆どもらっています。

今度、柔道整復科もそうなります。特に柔整科がその該当になっている学校はまずありません。その他にも高校生を対象にした国の助成制度があって、それは世帯収入が低い世帯に対して国がお金を出そうという、学びの機会を国が作ってあげるという形で国が行っている制度ですが、本校はその認定校にもなっています。

―社会貢献についてはどんな風に思われていますか?

 例えば、災害医療で「アムダ(AMDA)」と一緒に鍼灸師も被災地に行ったりします。熊本の震災があった時に医療チームとして「アムダ(AMDA)」から緊急要請があり、その日の内に本校から3名位被災地に行かせました。

やはり多職種連携を意識していく訳ですが、毎朝ミーティング等がある中で、他の業種の人達は西洋医学の言語しか知りません

そこで我々東洋医学の言語を使って活動を行おうと思っても全く入れません。やはり鍼灸師が西洋医学的な考え方も出来て、尚且つ治療の組み立ては東洋医学で出来るような、そういった2つの言語を使えるような教育をしていかなければならないのだろうと思っています。

医療チームの中で治療をする時は多職種を意識して、治療の組み立ては、東洋医学を意識しながら行いますが、西洋医学の言語で病態を評価し、説明が出来るようにしていかなければダメだろうと、私はいつも考えています。

そうでなければ社会貢献、或いは災害医療にしても出来ません。そして今は、気持ちがあって、時間があればボランティアに行けるかというと行けません。鍼灸師会やそういった医療チームの研修が終わっている者でなければ、派遣出来ません。

―地域包括ケアシステムの参入について

 「地域包括ケアシステム」に参加したいとみんなが思っているのですが、一部の人以外は入っていけません。鍼灸師や柔道整復師は評価する委員会において病態把握を東洋医学の言語で説明したり、レポートの書き方に不備があったりするということを聞くことがあります。

病院や施設では、記録をしっかり残さなければいけないため、そういったことの厳しいチェックを受けますが、柔道整復師にしても鍼灸師にしても医療機関に勤めた経験が殆ど無いため、トレーニングが出来ていないのだろうと思います。

繰り返しになりますが、そういったこともあって多職種の中に入っていけない。本校ではカルテ等もしっかり書かせて、相当厳しくやるようにしています。更に症例報告会みたいな形の中で、自分が診た患者さんに関して、全てコメントをさせて、みんなの前で発表させるというトレーニングも行っています。

そういうことをやっていかないと地域包括ケアの中に入った時に、事務作業すら上手く出来ないと思います。そこのところはしっかりと国家試験前の学生達にちゃんと徹底できていれば、入りやすいと思います。

看護師さん達は患者さんのベッドサイドに行った時に本当によくメモをして、そのメモを勤務時間が終わった後にまとめています。そういう経験がやっぱり無いですね。

また本校では、医療人だという意識を持たせるために鍼灸科に関しては、自分個人の聴診器、血圧計を全員に持たせており、実技の時に相手が変わる度に必ず計ります。そういったことで〝自分は医療人なんだ〟という自覚を強く持ってもらうように努めています。

―先進的なことを手厚くされている学校であることがよく分かりました。今後の展望などもお聞かせください。

 同じ話の繰り返しになってしまいますが、本当に多職種連携の中に入っていかなければはり灸も柔整も医療として認められません。いつまでも「類似行為」という名称がついてしまっているのは絶対良いことではありません。その1点です。

医療人にならなければなりません。「脈診」で脈をとることは、東洋医学からすれば当たり前のことです。私の医療の定義は、患者さんからもらった情報は患者さんにフィードバック出来なかったら医療にならないと考えています。

血液を採ってそれを分析して、レントゲンを撮って〝ここに影がありますが、でも大丈夫、気にしなくても良いですよ〟等、全部フィードバックされる訳ですが、東洋医学ではフィードバック出来ません。脈を診て、その脈を第三者は共有出来ないのです。

また患者さんに、その脈の説明も出来ません。そういうようなところをもう少しちゃんと説明が出来るようなかたちになっていかないと私は医療に入れないと思っています。当然脈を診て、東洋医学的に分析をして治療は行います。

しかし、それはどういう風に変わっていったかというのは、西洋医学的な見方の中で評価を行う、そういうようなことをやっていかないと、これからの人達は生きていけないと思います。あくまでも「医療としての鍼灸」「医療としての柔整」というようなところを意識して私は教育していきたいと思っています。

―教員養成課程についても教えてください。

 本校には、はり灸の資格を取った者達だけが更に2年間勉強をする「教員養成課程」があります。つまり、そこの2年間の課程を修了しないと教員資格が得られないし、教壇に立つことが出来ません。

いま全国に4校ありますが、在籍者数が50人弱で、本校の学生が25人以上います。私は北海道から沖縄まで全国の学校を回って、各学校の中で、本当に目的意識がしっかりしている人達に対して教員養成科に入らないかという勧誘を行っています。教員養成科のレベルを下げたくないというのが本音であり、そうしないとこの業界を引っ張っていけないと思っています。

 本校のはり灸の教員養成科は、2年間で2000時間以上の勉強をしています。そして本校のはり灸の教員養成科は1年間に1人がハリを1万本刺すような教育を行っています。そういうこともあって、資格を取ってから教員養成科に行くとみんな教員の仕事よりも臨床が楽しくなってしまって、開業も凄く早いです。

その課程を置いている理由は何かというと、やはりちょっと年齢の高い人達が就職が出来なかったり、学ぶ場所が無い等ありますので、そのための受け皿でもあったりします。

 また、はり灸には柔整にもありますように「認定鍼灸師」という制度があります。5年間学会に出席をして、その後の試験に通ると「認定鍼灸師」になることが出来ます。学生達から〝認定鍼灸師を取るメリットはありますか?〟という質問を受けた時に〝メリットはありません。しかしその資格を取らないことに関して、これから何年か経つとデメリットになるということはあります〟と。

〝仮に貴方が、糖が出ているから専門の所に行って診てもらってください、と言われた時に貴方は何所に行くの?やはり糖尿病の専門医の所に君は行かないか?君達が「認定鍼灸師」という学会のタイトルを持っていると患者さん選ばれる可能性がある。資格を持っていないほうのデメリットは大きくないか〟という話です。

つまり、今からちゃんと学会に行く癖をつけて、学会の大会テーマ等を見ながら国民は何を求めているのかというキーワードを覚えて来なさい。それに対する努力をしなかったら君たちは絶対ダメだろうと伝えています。

6月の頭に「全日本鍼灸学会」がありましたが、良い講演が行われるから学生達にも聞かせたいということで、各学校にも声をかけるという話になり、本校は130数名が参加しました。また5年位前に東大で開催した時には本校の学生は200人参加しました。

とにかく本校では相当数のゼミを用意してありますし、教員の人間関係を含めて全て利活用して、就職等で失敗しないように頑張りましょうと学生も教員も一丸となって頑張っております。

                              (文責・編集部)

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