株式会社エス・エス・ビー
執行役員 青木 崇晶

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【タイトル】
野球肘、エコー活用で子供の未来を救う!

 前回は、アキレス腱断裂について超音波の画像観察をするメリットのお話しをしました。今月は、小学生の野球肘のお話しです。実際に接骨院に来院された患者の症例を交えて、エコーを導入している接骨院での運用をご紹介します。

昨今、野球日本代表の侍ジャパンは五輪、WBCなど大きな国際試合で優勝したり、日本選手がメジャーリーグで大活躍したりなど、野球は国民から大きな注目を浴びています。

そんな日本人選手をみて、将来プロ選手を夢見る子供も多いのではないでしょうか。年齢を問わず広く愛される野球ですが、プレーをする上で注意したいのが『野球肘』です。

野球肘はピッチャーのオーバーユースや外野からの遠投に起因して、投球時・投球後の痛みのほか、肘の曲げ伸ばしができない、ロッキングしてしまう等の症状が出ます。

『野球肘』という言葉は、投球により生じるスポーツ障害の総称ですが、成長期の子供と成人では障害を受ける部位に違いがあります。

成人に比べて成長期の子供の骨はまだ出来上がっておらず脆弱です。そのため、成長期型だと骨端で起きる障害が多く、成人型だと靱帯やその付着部での障害が多いことで知られています。

投球動作の中で、肘の内側には牽引ストレスが、外側の小頭には圧迫ストレスがかかります。

ある野球検診の結果では、上腕骨内側上顆障害が全体の18%外側の上腕骨小頭障害、橈骨頭障害が合わせて2%程、肘頭障害が0.7%確認されたという報告があり、野球をする人にはとても良く引きおこされる障害と言えます。

外側型は重症化してしまうと、日常の動作でも痛みが出てしまい、一昔前では手術をしてもプロではやっていけないかもしれないと医者から言われたそうです。

今回の患者さんは、12歳の男の子です。

〇11/24初診。週末土日に野球をやっていて、その他ドッジボールチームにも所属しています。

ポジションはピッチャー左投げ、左打ちです。投げるときは130球程度投げたこともあるそうです。

症状として、左肘内側に痛みがある。投球し始めると痛くなり、投げているうちに感じなくなり、投球後に痛みが起こる。痛みを感じ始めたのは8月以降で、特に一か月前くらいから痛くなり来院に至った。

こんな患者が先生の所に来院されたらどう対応されますか?

『日常生活では痛みはない』、『可動域制限はない』のがこの患者さんのポイントです。

問診・視診・触診・徒手検査までして理学所見を取った後に、確認でエコー観察を実施。左右の肘の内側を比較しました。

投球側の内側上顆前方に骨隆起像があり、プローブを後方平行移動すると移動しながら分裂像が描出された。

左右で比べてみると、明らかな形状の違いが分かった。

裂離骨折の可能性は残るが、運動制限はなく、一か月経過しているので経過観察としたそうです。

11/27が最終試合のため、それ以降は運動中止と母親に説明した。

〇11/30

最終試合後、裂離と思われる部分を観察すると、裂離部に高エコーが描出され、すでに少し修復が始まっているようにも見えた。超音波画像上大きな変化がみられれず圧痛が残存している。

理学所見と超音波画像を総合し、左肘関節のキャストシーネ固定(肘関節軽度屈曲位で上腕近位から前腕遠位)。3週間程度の固定を予定と説明。

12/7→12/21経過観察。理学的所見も画像上も予後良好と判断。

2年半後、別の部位で来院した際についでに経過観察したそうです。

如何でしたでしょうか?

この患者さんは現在高校生になり、高校に入ってからも野球部に所属して投手をすることもあるそうです。

野球肘の後遺症を残さず元気に活動しております。

もしかしたら患者さんの野球人生を救ったのかもしれません!

地域の医療の一端を担う喜びは何物にも代え難いのではないでしょうか?

野球肘は怖いことに今回の様に痛みを伴わず、可動域制限や痛みなどもなく患者自身が無自覚の内に悪化することがあります。

患者の主観や問診・視診・触診・徒手検査では得られない客観的な画像情報が得られる事は先生にも患者にとっても大きなメリットです。

野球愛好家が生涯野球をたっぷりと楽しむためには、けがの早期発見をして積極的に休むことが大切です。

地域の先生がリトルリーグにポータブルのエコーを持ち込んで野球肘検診を定期実施するなど関わりを積極的に持つことが大事だと思います。

これからは、『怪我をみる接骨院」への原点回帰が求められているのは前回もお話ししました。(株)エス・エス・ビーは、実際のエコーの使い方・見方のセミナーを随時開催しています。

その名も『エコトレセミナー』!

開催情報を弊社HPに随時アップしていますのでご興味のある人は是非、checkしてみて下さい!
URL https://www.ssb-echo.com/

より自信をもって、患者さんにとって一番良い施術を選択するお手伝いができます。これからもいろいろな症例の紹介をしてゆきますので楽しみにしていてください!

株式会社エス・エス・ビー
執行役員 青木 崇晶
画像出典:清戸整骨院

帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科
山本 明秀

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【タイトル】
第4回トレーナーという仕事(初級編)

 予想以上に早かった梅雨明けと、そこからの災害級の猛暑。そして気づけば新型コロナウイルスの感染者数の増大。また活動制限がかかってしまうのでは?と身構えてしまいます。

 さて、今回はスポーツ現場での活動にあたり必要な『EAP』についてお話させて頂こうと思います。前回は緊急事態に対する物品の準備などの話題でしたが、今回はいわばソフト面の準備のお話になります。

スポーツ現場で用いられる『EAP』とは Emergency Action Planの頭文字を繋げたもので、緊急時対応計画をさします。

スポーツには、練習のたびに誰かしらケガ人が生じるものから、ほとんどケガ人が発生しないものまで、いろいろな競技種目がありますが、いざケガ人が出た時にその場しのぎで対応しているようではミスや連絡漏れなども生じてしまいます。

そこで登場するのが『EAP』となります。

写真-1 EAPの一例

写真-1に示したのは、筆者の関わっているチームで使用しているEAPの一部抜粋です。

ケガ人が発生しやすい競技種目ですので、生命に関わらない部分のEAPも作成し、知識は持っていても経験の浅い学生トレーナーが対応する際にも、頭が真っ白にならないで済むようにフローチャートを作成しておきます。

ここに記しておくことは、①役割分担②機材のありか③搬送経路④連絡先などです。

①役割分担 
誰が倒れた選手のところに駆け寄って対応するのか。
誰が資機材(タンカ、ネックカラー、AEDなど)を持ってくるのか。
誰が救急要請を行うのか。
誰が救急車の誘導を行うのか。
誰が病院へ付き添うのか。

その場で考えるのではなく事前に決めておきます。

➁機材のありか
当チームでは練習のたびにAED以外の機材はフィールド横のトレーナーステーションにまとめて出してあるので(web版5号を参照)記入の必要はありませんが。

③搬送経路
救急車を要請した際のルートを明示しておきます。

④連絡先
選手の個人情報だけではなく、救急要請をせずに自分たちで病院へ連れていくこともありますので、近隣の各診療科ごとのリスト(土日や夜間に受け入れしてくれる病院のリストを連絡先だけではなく地図付きで用意しておくと便利)、救急車を呼ぶ場合には大学の警備室にも連絡が必要なのでその番号などもまとめておきます。

⑤その他
ひと昔前は、保険証のコピーに印鑑を押したものでも対応してくれましたが、今はコピーでは受け付けてもらえず、保険証の現物が無い場合には保証金を預けて後日清算するという形になりますので、そのお金も必要です。大人が一緒に行けない場合もありますのでタクシー代・診察料・保証金の立て替え用に数万円を準備しておきます。

救急要請する際には、自分の携帯番号も出てこなくなりますので、グラウンドの住所や自身の携帯番号、話す内容の台本なども作成しておきます。

写真-2 インカム

 EAPにおいて役割分担などは決めておきますが、ポジション別の練習など、広いグラウンドで散った形での練習中に何か起こると把握しきれず動きが後手に回ってしまいます。そこで、筆者はグラウンドで動く際にはインカムを利用しています。トレーナー全員と、場合によってはマネージャーにもインカムを付けてもらい、情報を全体で共有しています。

 アメリカンフットボールの場合は良いのですが、これが中学校や高等学校のラグビーの場合ですと練習や、練習試合の際にはインカムを活用できますが、公式試合の場合には使用を禁じられています。大学や社会人では使用できるのですが、ケガが生じる危険性のある競技種目なのでなぜ使えないのかと食い下がったら「不公平だから」と言われたこともあります。また、インカムでトレーナーの口から作戦を伝えられても困るとも言われたこともあります。そんなことをすると思われているのが心外です。

 EAPを作成したらそれで終わりではなく、実際に運用できるのかシュミレーションを行う必要があります。例えば、タンカで選手を運ぶ予定になっていたのに人を乗せた状態だと通路の角が曲がれない、エレベーターに乗せられない、階段の踊り場を通過できない。などということも実際に起こります。人を乗せていないタンカではなく、実際に傷病者役の人を乗せた状態で搬送が行えるのか試しておかないと、本番ではその経路は使えません。

 また、タンカへの乗せ方、ネックカラーの付け方、防具の外し方など一般の救急法の講習会で学ぶ方法と少し異なるので、実践練習を繰り返して技術を身に付けておきます。

写真-3 シュミレーションの準備中

 写真-3はこれからシュミレーションが始まるところです。実際にやっている風景は色々なところに出ているので、こちらではあえて準備中の風景を載せてみました。

 EAPを作成している中で、不足している機材や情報などに気づくこともあります。とりあえず1度たたき台として作成してみて、スタッフ同士で意見交換をされると良いと思います。

『日本AED財団』のホームページでは「EAP作成ガイドライン」というものが無料でダウンロードすることもできます。具体的にどうやって作成したらよいか分からないが、文献を調べてまでやるのはちょっと・・・。と感じられている方は是非見てみて下さい。

笠井整骨院 (メディカル・ハイドロバッグ研究所)
院長 笠井 浩一

【タイトル】
【関節の転位と外力】

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 では、なぜ潤滑の不全や、生理的な運動機能軸からの逸脱ということが起きるかということと、その対処法について考えてみたいと思います。

膝関節(大腿骨、脛骨間)を例にして考えてみたいと思います。

もし、正常状態の二骨(大腿骨、脛骨間)に不整な外力がかからなければ、二骨の位置関係は変わることは有りません 

【ニュートンの法則第一法則、静止あるいは等速度運動中の物体は外力が加わらないかぎりその状態を続ける(慣性の法則)】

正常の範囲内での運動が保たれる場合、関節には生理的運動軸を保つ機構が存在しますので、異常は起きません。

しかしながら、何らかの不整な力が関節に作用し、運動機能軸保持機構の限界を超えたなら二骨間には微細な転位が生じることになります。

その転位の方向は前後軸(X軸)方向、左右軸方向(Y軸)、上下軸方向(Z軸)の離開、捻転、軸傾斜などが考えられ、単一の転位ではなく多くはその複合であると考えられます。

不測の事態で膝関節に直接大きな力が作用し関節間の転位が起こる以外にも、普通に歩行していても足関節の転位による下腿軸の傾斜があれば脛骨、大腿骨間に曲げの力が作用することになります。

また、股関節に異常があり大腿骨軸が内旋傾向にあれば大腿の過内旋による膝関節過伸展や屈曲阻害の力が作用することになりますし、大腿骨が外旋傾向になれば膝関節屈曲傾向、伸展阻害の応力が膝関節に作用することになり関節相互体の微小転位につながります。

このように、関節のアラインメントの一部が崩れても、関節の生理的機能軸を逸脱する力が作用することになります。

次に作用する外力の種類について考えてみたいと思います。

今度は足関節の内反捻挫を例に考えます。

1、歩行中に段差で捻挫、スポーツ中ジャンプの着地に失敗して捻挫といった大きな外力が作用する場合。

2、股関節や仙腸関節に異常があり歩行中、接地するときに足部が内旋傾向になり墜下することにより歩行中に持続的に足関節に内反応力が作用して生理的機能軸からの逸脱を起こす場合。(弱い力が反復して作用)

▼異常歩行の動画

3、正座等をしていて足関節に長時間内反、背屈が強制されて運動機能軸から逸脱を起こす場合。(静力学的な持続する力)

の場合は外力の認識はできますが、2,3についてはむち打ち損傷でもよくあるように外力の作用後、時間をおいて症状が出現することが多いこともあって、患者が外力と症状を結び付けて認識することは難しいようです。

多くの関節障害の本体が、生理的な運動機能軸からの逸脱であると考えると関節相互体の位置の転位を必ずともないます、位置の転位は外力の作用がないとおこり得ません。

以上のことから、自然に発痛や、障害が起こることは無く、必ず何らかの力が作用していることになります。

この関節間の微細な位置の転位を元に戻し、潤滑を再生させ、運動機能軸を復元する行為が関節整復です。

整復を行うにはまず、関節の微細な転位を判定する必要があります。

微細な転位を判定し過剰整復、整復不全を起こさず絶妙の力加減で元の位置に戻し、潤滑と運動機能軸の復元をするわけですから高い技術力と感性が求められます。

このことが、関節整復の再現性を低めて、一般化できない原因の一つであると考えています。

この課題を解決するために、非圧縮性流体圧を応用する方法を考案したのです。

次回は非圧縮性流体圧を使用した整復の理論について解説いたします。

シズイ労務サポート 後藤 葉子

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【タイトル】
キャリアアップ助成金(賞与・退職金導入コース)ご紹介

  梅雨も明けて夏本番が今年はいつもより早く訪れましたね!長いながーい夏が始まりそうです。暑くて溶けないようにしないとですね・笑

さて、今回紹介するのは、キャリアアップ助成金(賞与・退職金制度導入コース)です。すべての非正規社員(パートタイマー等)に賞与・退職金の制度を新たに設定、賞与の場合は実際に支給すること、退職金の場合は積立をすることで助成金の支給となります。

●助成金を申請できる条件

賞与の場合→1名につき5万円以上支給

退職金制度の場合→1ヵ月分相当として3千円以上を6ヶ月分または6ヶ月分相当として1万8千円以上を積立てる

・過去に諸手当制度等共通化コースで手当の追加に関して助成金の支給を受けている場合は申請不可

●支給額
賞与又は退職金制度の導入をした中小企業
38万円(48万円)

同時に2つの制度を導入した中小企業
54万円(67万2千円)
※( )内は生産性要件を満たした場合。

●申請の流れ

キャリアアップ助成金計画書作成・届出

計画書認定

制度追加後賞与支給・退職金積立
6か月後に支給申請

受 給

やってみたいけどちょっと不安、もう少し詳細を聞きたい、代行申請してほしいなどのご相談は
goto@smc.ac.jp
シズイ労務サポート後藤宛まで連絡ください。

では、また次回お会いしましょう。

全国柔道整復師連合会
田畑 興介

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【タイトル】
今後の柔道整復療養費の姿

 前回も社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会(以下、専門委員会)の議論の内容について寄稿させて頂きました。

その他に、専門委員会で議論が進められている最重要課題として「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みについて(オンライン請求の導入、オンライン請求以外の請求方法の取扱い)」というものがあります。

この課題が専門委員会の俎上に載るのは、復委任団体の中に悪質な団体が存在し、所属会員に支給されるはずの柔道整復療養費が前代表者により私的に流用された事案に端を発しています。

このような嘆かわしい事案の抜本的な解決策として、柔道整復療養費でもオンライン請求を導入しようと議論が始まっているのです。つまり、療養費の支給申請は個々の施術管理者からオンラインで審査支払機関に対して行われ、入金に関しても審査支払機関から個々の施術管理者の金融機関口座へ支払われる仕組みです。

確かに、療養費が復委任団体を経由しませんので前述のような第三者による私的流用は無くなります。そして、施術管理者、保険者、審査支払機関の何れにおいても効率化や合理化のメリットが存在することは想像に難くありません。しかし、デメリットも多く存在します。前述のオンライン請求の仕組みは、言い換えれば「施術管理者の総個人請求化」ということができると思います。

ここで言う「個人請求化」とは何れの団体にも加入していない施術管理者を指します。いずれにしても、オンライン請求という先進的な変化が一個人の不祥事によって加速してしまうとは、なんとも皮肉なことです。

 現在の開業柔道整復師の分布は、公益社団法人都道府県柔道整復師会(協定)への所属が概ね30%、それ以外の個人請求柔道整復師(契約)が概ね70%です。数字が示す通り、個人請求柔道整復師が多数を占めているのが現状です。そのうち何れの団体にも所属していない全くの個人請求柔道整復師が30%弱存在しているのです。

オンライン請求が導入され、そこにメリットを感じる施術管理者が増えれば「施術管理者の総個人請求化」に拍車がかかることが予想されます。このような現象は、業界のさらなる弱体化につながるとして、多くの業界主導者が懸念を抱いているのです。

 柔道整復療養費は2012年度から減少傾向に転じ、2011年度から2019年度の9年間で約907億円も減少しています。その要因の一つとして、何れの団体にも所属していない全くの個人請求柔道整復師が増加したことが考えられます。

柔道整復療養費の増減が決定されるのは専門委員会の場であることに間違いありません。また、専門委員会の事務局として運営を行い資料作成しているのは厚生労働省保険局医療課です。しかし、専門委員会の議論に至るまでには紆余曲折があり、そこには様々な政治家の関わりがあるはずです。

「施術管理者の総個人請求化」は政治家からすれば、「束になっていない魅力の乏しい業界」と認識されることに直結します。そこで、個人契約柔道整復師の統合団体である日本個人契約柔整師連盟(代表 岸野雅方)一般社団法人全国柔道整復師連合会(代表 田中威勢夫)は、個人契約柔道整復師の意見集約を図り業界の諸問題の解決に当たることを目的に、全国柔道整復師統合協議会(共同代表 岸野雅方 田中威勢夫)を2020年4月に発足させました。

 その所属施術所は全ての開業柔道整復師の概ね30%を数えています。先の参議院議員選挙では、全国にブロックを設立し横断的に選挙運動を実施しました。

所属団体の垣根を越え、全国的に連帯し国政選挙で運動を展開したことは、1988年に個人契約柔道整復師が認められて以来、初の試みであり、このような運動の積み重ねが、業界の弱体化を食い止める足掛かりになると信じてやみません。

 さて、本題のオンライン請求の導入への行程は専門委員会の場で、どのように議論されているのでしょうか。審査支払機関側の委員からは「国保総合システムの更改が令和6(2024)年度に予定されているが、現在開発を進めており、これにのせることは難しい。その先の更改は、現在の計画では令和8(2026)年度である。(中略)紙請求や媒体の請求では事務の効率化が図られず、全ての施術所がオンライン請求になることが前提。」と発言がありました。

要約すれば、柔道整復療養費のオンライン請求の導入は令和8(2026)年度からということになるのでしょうが、紙請求や電子媒体での請求は認めず「例外なきオンライン化」を条件にしている点に着目すれば、肌感覚で申し訳ないのですが、実施にはこの先10年以上の期間を要するのではないかと考えています。

 レセコンをお使いの施術管理者であれば、所属団体に提出する何らかの電子媒体が存在するはずです。よってすでに電子化はできています。そのデータを厚生労働省が定めた規格・方式(記録条件仕様)に変換し、オンラインで請求すれば「例外なきオンライン化」に概ね対応できるのだろうと思います。

ところが、現在も手書きで支給申請書を作成しておられる施術管理者も存在します。そのような場合は、手書きの支給申請書をレセコンに入力し規格・方式(記録条件仕様)に変換しオンライン請求するという煩雑な作業を要することになります。なぜなら、審査支払機関側は「例外なきオンライン化」を条件にしているからです。

現在、医科や歯科のオンライン請求に係るコストを参考に、個々の施術所で対応した場合のコスト算出を試みています。しかし、例えばインターネット回線の有無など、施術所により見積もりの項目に多様な変化が生じることから本稿では金額の記載は避けさせて頂きますが、現在の施術所の平均的経済状況からすれば、決して安価とは言えない金額だと考えます。

 他の医療介護系職種はすでにオンライン請求を実現しています。柔道整復の業界だけが反対ばかり言っていたのでは、世の中の流れから取り残されることになってしまいます。様々なデメリットが存在する中でも「施術管理者の総個人請求化」を回避しつつ「例外なきオンライン化」に適応していかなければなりません。

現在、厚生労働省の案には挙がっていませんが、オンライン化に向けて所属会員の申請書データを厚生労働省が定めた規格・方式(記録条件仕様)に団体がまとめて変換し審査支払機関にオンライン請求する仕組みはどうでしょうか。

そうすれば、個々の施術所への事務的・経済的負担は軽減するでしょうし、個人情報満載のデータに対するより高いセキュリティも団体のホストコンピュータにより実現可能でしょう。

我々のような復委任団体はオンライン請求を迎えるにあたり、所属することの既存メリットである医療過誤に対する賠償責任保険や弁護士費用など様々な団体割引に加え、職能団体的な色合いをさらに強めつつ、全ての個人請求者が復委任団体によるオンライン請求に魅力を感じて頂けるような運営を目指していかなければなりません。

そして、柔道整復師という国家資格は世界に一種類しか存在していません。

協定や契約といった垣根も超えて、「束になっていない魅力の乏しい業界」と揶揄されぬよう「例外なきオンライン化」という荒波を乗り越え、さらに柔道整復療養費に磨きをかけて未来へと継承していきたいものです。

本日の記事は以上になります。

からだサイエンス WEB版では、各先生の記事をまとめていますので、先生に絞った記事もご覧になれます。

次回の記事もどうぞよろしくお願い致します。

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