笠井整骨院 (メディカル・ハイドロバッグ研究所)
院長 笠井 浩一

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【メディカル・ハイドロバッグの鑑別、整復法】

 前回に次の症例をあげます

50代男性溶接工、右手の第一指、第二指の掌側先端に強いしびれが常にあり来院されました。手根管部にチネルサイン陽性、円回内筋部にもチネルサイン陽性、パーフェクトOテスト陰性でした。

皆さんはこの例をどう解釈されるでしょうか。

円回内筋部にも、手根管部にもチネルサインがあり、円回内筋症候群、手根管症候群共に疑いがあるわけですが、何故このような症状が出ているのでしょうか?

この場合は正中神経全体の牽引状態が想定されます、正中神経全体が牽引状態であるために円回内筋部にも手根管部にもチネルサインが発生している可能性があると考えました。

頚胸移行部の状態を確認すると第一肋骨型のレバーアーム現象が確認され、肋骨頭の浮上or沈下を確認すると沈下状態が確認されました。

そして鎖骨肩甲骨のダイヤモンド構造の前方後方の長さを確認すると前方長軸が確認されました。

まず、一肋骨沈下型で前面の斜角筋の緊張が強くなり斜角筋部での絞扼が起こり、これに鎖骨肩甲骨のダイヤモンド構造の前方長軸型が併発、そして頚胸移行部のレバーアーム現象と三つの条件が重なることよって筋皮神経、正中神経、尺骨神経が強い牽引力を受けていると考えられます。

さらに橈尺関節の異常で円回内筋部のモーメントアームが増大し筋緊張が発生、また手根骨の部分にも異常があり手根骨のアーチ低下により手根管部の内圧が上昇という問題が発生していました。

この症例の場合、頚胸移行部の異常に加えて、鎖骨肩甲骨のダイヤモンド構造の異常、肘関節、手関節の異常と多くの関節の異常が重なるというものでした。

手根管症候群、円回内筋症候群は単独で発生する場合もありますが、このように多関節が関与することも珍しくありません、慎重に判断することが必要であると感じました。

最後に検査に対する考え方と整復法について、注意点も含めて述べたいと思います。

頚胸移行部の検査には一般的に側屈テストが行われます、理論を充分に理解し正しく検査が行われば、問題はありませんが、理論を理解せず強い力で行う検査には意味がありません。左側の頚胸移行部異常を例に考えると右方向に強い側屈をさせると右側の椎間板内の内圧が高まり髄核は左方向に押し出され症状を悪化させることになります。

第一肋骨型の場合も強い右側屈をさせると肋椎関節の潤滑性が低下し症状を悪化させることがあります。

検査をする場合には充分に訓練をした上で施行されるべきと考えています。

ハイドロバッグを使用した検査については前述したとおりで検査自体が整復行為と同じですので安全性が高いと考えています。

左の頚胸移行部の異常を例にとって説明します。

髄核型の頚胸移行部異常の整復は、頚胸移行部にハイドロバッグを押し当てて、内圧の上昇を待ち術者はそのまま圧を保ちます。

そうするとこの場合髄核が左にあり椎間関節が浮上しているため、左の椎間関節位置が高く感じます。

次に患者さんの手掌を合わせて合掌させます、合掌を保持したまま上肢を挙上します、

そうすると椎間板内の内圧があるため髄核はさらに左に押し出され椎間関節は浮上します。

術者は椎間関節の浮上を抑止するような気持ちでハイドロバッグ押し当てます、この合掌保持したままの上肢の挙上を数回行うと椎間関節の浮上はなくなり整復が完了します。

次に第一肋骨浮上型による、頚胸移行部の整復について、左側を例にとって説明します。

ハイドロバッグを肋骨頭、肋椎関節部に当てます。この時点で左側の肋骨の浮上を感じ取れます、先ほどと同じように患者さんの手掌を合わせて合掌させます。合掌を保持したまま上肢を挙上します、そして患者さんに深呼吸を指示します。そうすると患側左側の肋骨頭が吸気時に大きく早く動くことが観察されます。

ハイドロバックでこの動きを抑止するように圧力をかけると数回の呼吸で過剰な浮上運動が停止し整復が完了します。

肋骨の沈下型で浮上は確認できませんが、浮上型と同じ位置での押圧と整復操作で整復できることが確認できています。

ハイドロバックなしでの合掌、上肢の挙上で頚胸移行部整復に効果があるとした向きもあるようですが、臨床上問題を抱えているような場合にはほぼ無効と言えるでしょう。

次は骨盤部と股関節の異常と整復について考えていきたいと思おいます。

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