【メディカル・ハイドロバッグの鑑別、整復法】
前回書きました皮膚のかぶれの患者さんです、もちろん湿疹は主訴では有りませんがもう何年にもわたり湿疹が出たままとなっています。
皮膚科を受診し薬を塗っていますが、効果はないようです。
この患者さんの頚胸移行部ですが、下記の図の下のような第一肋骨型の頚胸移行部異常が確認されました。
側屈するとかぶれの部分に強い張力が発生し本人も張り感を訴えます。
次に頚胸移行部が影響する疾患について解説します。
まず第一にケルバン病です。
ケルバン病にも痛みのタイプがあります。
まず、動かしているときだけ痛むタイプ。
もう一つは安静時痛を伴うタイプです。
安静時痛を伴うタイプは夜間痛も有し、疼き激しく痛むことが多いです。
ではなぜこのようなことが起きるのでしょうか、ケルバン病自体は
図の通りCM関節部の大菱形骨の遠位端がわずかに浮上することにより、短母指伸筋腱と長母指伸筋腱にかかるモーメントアームが増大し腱の張力が増します。
それにより二つの腱と手関節の母指側にある腱鞘(手背第一コンパートメント)との間の摩擦力が高まり炎症が発生します。
しかし、もし頚胸移行部に異常がないのならケルバン病の第一のタイプ、使用時のみ痛み安静時は痛まないタイプとなります。
しかし頚胸移行部に異常を持つ場合、頚胸移行部でのレバーアーム現象が発生しているために橈骨神経にも牽引力が発生し障害されることになります。
更には筋、筋膜も牽引力を受けるために、安静時痛、夜間痛を伴う激しい痛みを持つこととなります。
また、五十肩にも可動域の制限はあるものの強い痛みを伴わないものと非常に強い痛みを伴い、炎症期をへて癒合肩へと移行していくものがあります。
前者は、股関節の代償性相同関係により対側の股関節異常の影響で肩関節自体の潤滑不全により可動域が制限されます。
(前方股関節)Hip-Aに対しては対側の肩甲骨、鎖骨のダイヤモンド構造の後方長軸化を誘発し肩関節の後方挙上制限を起こします。
また、(後方股関節)Hip-Pは対側の肩甲骨、鎖骨のダイヤモンド構造の前方長軸化を誘発し肩関節の前方挙上制限を起こします。
ただ、肩関節単独の障害では僧帽筋部に凝り感、上肢の脱力感、肩に痛みなども出しますが夜間痛などの安静時痛を出すことは無いように感じています。
五十肩にもいろいろなタイプがあるのですが、頚胸移行部の影響で主に腋下神経、橈骨神経が障害されているタイプについて考察を述べたいと思います。
左肩の五十肩を例にとって
まず、頚胸移行部の異常が発生するとレバーアーム現象により左側の軟部組織が牽引力を受けることになります。
またこの時右側の前方股関節(Hip-A)の関係により左側の肩甲骨、鎖骨からなるダイヤモンド構造の後方が長軸化することになります。
このことにより頚胸移行部のレバーアーム現象と後方長軸化によるモーメントアームの増大という異常が二つ重なり、
上腕三頭筋の長頭・上腕骨・大円筋・小円筋の4つに囲まれるCの部分で腋下神経の絞扼が発生します。
同時に四辺形間隙(クワドリラテラル)の直下にある大円筋、上腕三頭筋長頭、上腕骨の間に形成されるトンネル三頭筋裂孔でも橈骨神経の絞扼が発生します。
肩関節を前方に挙上すると三角筋部、橈骨神経後に沿った部分、そして四辺形間隙(クワドリラテラル)、三頭筋裂孔の部分で疼痛が発生します。
また肩関節を下制した状態で内転すると四辺形間隙(クワドリラテラル)、三頭筋裂孔の部分でテンションが発生します。
このタイプの五十肩に対しては、骨盤部と股関節の整復、頚胸移行部の整復が不可欠です。
整復が成功すれば炎症期から癒合期に移行することなく治癒しますが、肩関節のみの治療は意味をなさず、炎症期を経て癒合肩へと移行します。