株式会社リグア 森本 光樹
【タイトル】
業界の今後100年について
整骨院には健康意識が高い人が通われていると言う認識があるのではないでしょうか?
しかし、どちらかと言うと整骨院には健康意識が低い方が集まるとも言われています。
ものすごく健康状態が悪い患者様はおそらく入院されていることが多いかと思います。
入院が必要ではないですが、健康状態が悪いと言われる患者様は、痛い辛いだるいこのような症状が出てきている方になります。
これまでの100年の整骨院は、健康状態が悪い、肩が痛い辛いだるいが取れるところまでを行われていました。
しかし、整骨院の認知も広がってきており、患者様にとって整骨院に通うことで痛い辛いだるいが取れるのは当たり前になってきています。
整骨院が今後求められることの1つとして、健康状態を普通にするだけではなく、普通の状態から健康状態が良いと言われるところまで、見ていくことができるのかが今1番求められているところになっています。
その中で、ジムやパーソナルトレーニング、ヨガ、カーブスなどの健康を維持するための施設が多くできてきております。
健康意識が高い人たちは、もともとこういったところに通っているため、
痛い辛いだるいが出てしまってから通うことになる整骨院にはどちらかと言うと健康意識が低い方が多いと言うふうに言われております。
整骨院でもジムと併設していたり、パーソナルトレーニングのメニューを取り入れている所が増えています。
しかしこれらのターゲットとしては、学校の部活動などでスポーツをしている競技者に対して行っていることが多いです。
おおよそ来院患者さんの2割は外傷と言われており、残りの8割の患者様は運動しない層になります。
スポーツをしている方は、嫌でも自分の体に興味を持っています。なぜなら自分の身体の状況がパフォーマンスに影響するからです。
しかし、先ほども述べたように、来院患者様の8割は運動しない層になります。
この8割に対してウェルネスコンディショニングやストレングストレーニングが必要だと考えております。
健康意識が低い方たちに対して、パーソナルトレーニングやジムでのトレーニングを行うのは、なかなか敷居が高く始める人は少ないですが、整骨院だからこそできる予防メニューとして何を提供していくかが今後1番求められています。
もちろんこれまでの健康状態が普通になるメニューも必要とされていますが、いかに患者様の健康状態がいいと言われる状態まで導いていけるかが今後のニーズになります。
売上の定義は、『患者様の満足度と期待されている指数』であると我々は考えておりますが、相手軸、患者様軸になり、新領域に取り組んでいる整骨院は売上が伸び続けています。
今後必要とされるニーズを次回以降でも伝えていきます。
株式会社エス・エス・ビー
執行役員 青木 崇晶
【タイトル】
アキレス腱断裂とエコー活用法
前回までは、超音波観察装置を使用する上で覚えておきたい用語や注意点についてご説明しました。
今回からは、実際に接骨院に来院される患者の症例、エコーを使用する先生のインタビューなどを紹介していきます。
今月は、アキレス腱断裂について画像を読影する際に必要な知識や、エコーのメリットのご説明をしたいと思います。
〇アキレス腱断裂の受傷要因
陸上競技の棒高跳びや幅跳び、バレーボールに良く見られるような、走る・踏み込む・ジャンプなどの一連の動作でふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)を急激に収縮した際や、着地動作などで急激に筋肉が伸ばされた時にアキレス腱の一部または全てが切れてしまうことで発生します。
受傷好発年齢は30〜40歳代で、主にスポーツ活動中にアキレス腱に強い力がかかったときに起こりますが、50歳以上の年齢層でもスポーツ活動以外にも日常動作による受傷をすることがあります。
ある接骨院にてそろそろ閉院のころ…
バスケットボールの部活練習中に怪我をしたという患者さんが来院されました。相手のシュートを止めようとジャンプをした瞬間に違和感を覚え、その後、歩けなくなったと言います。
こんな患者が先生の所に来院されたらどう対応されますか?
きっと、問診~視診~触診で腱の連続性や陥凹の有無を調べてから、徒手検査でトンプソン検査などを行うのではないでしょうか?
陥凹蝕知では、周囲の腫脹によりマスクされてしまうこともあり、陳旧例では認められないことも多いです。トンプソンテスト(シモンズテストなど)では断裂の程度が分かりません。
これでは患者に対するインフォームドコンセント(施術計画の説明)も「今後の様子を見ながら治療して行きましょうね…」とぼやけがちになります。
ここで、上記検査にエコー検査をプラスしてみるとどうでしょうか?
徒手検査をしながらアキレス腱自体をリアルタイムに断層像で見ることができます。触診で確認した陥凹や、現局圧痛部位を可視化し、『部分断裂』なのか『完全断裂』なのかを患者さんと一緒に確認できます!
最大屈曲した際にアキレス腱の断端が近づくかなど、手術が必要なのか保存療法にするのかの判断材料の一つにもなります。
また固定の肢位の判断やリハビリを始めるタイミングの判断の材料にもなります。
ただエコー観察は「完全な検査」ではなく、あくまでも判断の材料の一つであるということを忘れてはいけません。
患者さまは自分の怪我した部位を簡便に覗き見ることができ、それにより、より正確な症状の状態の説明と治療方針の提案を受けることができます。そこまでしっかり対応してくれる先生に信頼を寄せないはずがありません。
先生も迷いながら説明することはもうありません。自信をもって、患者さんにとって一番良い施術を選択するお手伝いができます。
学校のカリキュラム変更で、医用画像の理解の中にエコーの授業が含まれ、国家試験でもエコーの問題が出るようになりました。
これからは、『怪我をみる接骨院」への原点回帰が求められているのだと思います。業界の中でもアンテナの高い先生は頻繁に勉強会に参加されています。
(株)エス・エス・ビーも、先生に有益なエコーセミナー、その名も『エコトレセミナー』の情報を随時WEB配信しています。ご興味のある人は是非、最新情報を弊社HPにアップしていますのでcheckしてみて下さい!
これからもいろいろな症例を紹介、有益な情報の発信をしてゆきますので楽しみにしていてください。
エコーセミナーの情報をcheck!
URL https://www.ssb-echo.com/
株式会社エス・エス・ビー
執行役員 青木 崇晶
画像出典:佐藤代田整骨院
アールエイ姿勢均整研究会
代表 青柴 龍昇
【タイトル】
第3回 簡単な腰椎のバイオメカニクス
前回に続きまして、
今回は腰椎の簡単な運動学について語らせて頂きます。
仙腸関節の私の応用理論は秋以降にご紹介させて頂きます。
脊椎全体を診て、
一体どこが偏移を起こしやすい部位といえるのでしょうか?
私はこう考えます。
1.質量の差が大きい部位
2.生理運動の差が大きい部位
3.彎曲の頂点
質量の差が大きい部位とは、頭蓋骨と上部頸椎、骨盤と腰椎4番5番ということになるでしょう。
生理運動の差が大きい部位とは、回旋運動に対応している胸椎と回旋運動に対応していない腰椎の間、すなわち胸腰移行部、がっちりとした胸郭で安定度を得ている上部胸椎と頸椎の間、すなわち頸胸移行部ということになるでしょう。
彎曲の頂点という考え方は、例えば右凸の弧があり、その下に連続した左凸の弧があると想像してみてください。
竹ヒゴをグーッと曲げて見られるのもいいかと思います。
腰椎が左凸で胸椎が右凸としますと、胸椎は重力の作用でもっともっと右凸を作りたい力が常に働いています。
(実際は筋力がこの重力に対抗します)
そして胸椎は、一固まりの物体として腰椎に乗りかかることにより、胸腰移行部に偏移点ができ側屈偏移が生じ、胸椎の彎曲の頂点も偏移が生じるという考え方です。(前額面側屈偏移の可能)
要するに、内臓系を考慮しない脊椎偏移は、概ね決まった部位が偏移を起こしやすいと言えます。
それでは本題に入らせていただきます。
腰椎の主な運動は、軸方向の圧迫、軸方向の伸展、屈曲、伸展、回旋、側屈、側方であり水平面移動である回旋、側方は純粋な運動として起こりません。
腰椎の関節面は矢状面状に近く、矢状面状の奥には前額面状の関節面も存在するという形状上、屈曲、伸展運動に適しており、今回は屈曲運動について思考してみましょう。
(回旋運動は少ないとされていますが、関節軟骨の水の吸水により片側3°までとする生化学的な考え方が妥当)
(カパンディー関節生理学 脊椎編より)
腰椎全体としての屈曲・伸展可動域は年齢により差がありますが、屈曲40°伸展30°程度が代表的な数字です。
また上図から、35歳~49歳の年齢層では、腰椎4,5間が最も屈曲可動域が大きくなっています。
これは腰椎椎間板ヘルニア多発地帯と同部位で、屈曲動作が腰椎椎間板ヘルニアへの影響が伺えます。
今度は分節屈曲・伸展運動についてまとめてみましょう。
(カパンディー関節生理学 脊椎編より)
1.屈曲運動 ①椎間関節は開き、接触面積減少
②髄核後方圧
③黄色靭帯、棘間靭帯伸長
2.伸展運動 ①椎間関節は閉じ、接触面積増加し安定位
②髄核前方圧
③前縦靭帯伸長
髄核の移動に着目しますと、後方移動しやすく、前方移動しにくいのです。これは線維輪の前後の構造上の違いがあり、後方は弱い線維構造となっているのです。(詳しくは生化学の領域です)
要するに、前かがみで体幹を屈曲すると、髄核は後方圧移動しやすく、体幹を伸展すると、髄核前方圧移動しにくいと考えられているのです。
次に腸腰靭帯について思考してみましょう。
(カパンディー関節生理学 脊椎編より)
(カパンディー関節生理学 脊椎編より)
仙骨を矢状面で観察しますと、自然位に前下方に傾斜し、立位での仙骨の水平面に対する角度は約40°といわれています。
標準的な40°の腰仙角では、L5S1連結部における前方剪断力は、上半身の体重の64%に相当します。(sin40°)
この剪断力に対抗し、腰仙関節椎間関節の矢状面状に対する前額面状の要素増大という骨性抵抗と、腸腰靭帯による下部腰椎と骨盤の強い連結により、安定化されています。
さてこの腸腰靭帯はどのような役割を担っているかについて思考してみましょう。
腸腰靭帯は上方線維束と下方線維束が存在します。もちろん線維形状は入り乱れていますが、大きく分けると、この二つであるといえます。
上方線維束に着目してみましょう。
上方線維束はL4と骨盤を連結させており(上図 赤色ベクトル)、この役割について考えてみましょう。
1.前方移動を防いでいるかも
2.上方移動を防いでいるかも
3.後方へ行かそうとしているかも
4.剪断力緩衝装置かも
5.腰椎前彎に寄与しているかも
この5点が、上図赤色ベクトル(矢印の方向は上図にはありませんがベクトルと表現します)で観察できます。
さてここで腰椎椎間板ヘルニアの多発地帯が、腰椎4番5番の椎間板であることを思い出してください。
例えば、前にある植木鉢を移動するために、体幹を前屈させ腰椎を屈曲させたとしましょう。
大きく屈曲していくと同時に、腰椎4番から骨盤に繋ぎとめている上部線維束が腰椎4番の前方移動を防ぐと同時に若干の後方移動させる力がはたらきます。(上図赤色ベクトル後方分力)
この力が腰椎5番に伝達され前方移動を防ぎます。
となりますと上方線維束が腰椎4番の屈曲しようとする力を緩衝しているとも考えられます。
体幹を前屈させ、腰椎を屈曲したとき、腰椎4番5番の椎間板で屈曲が一番大きいのは、この上方線維束の仕業なのです。
腰椎運動学はこの他に、相当な理論があります。
私は今回お伝えした内容の上方線維束を応用し、4種類の独自の偏移を作成しています。
簡単に申しますと、
・髄核運動支点喪失パターン
・髄核球形維持パターン
・椎間関節パターン
・癒着パターン
私の理論が知りたい方は、青柴セミナーに来てください!
今年は東京、横浜、名古屋、三重合宿、大阪、博多に出没する予定です!!
次回は胸椎胸郭バイオメカニクスをご紹介します。
帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科
山本 明秀
【タイトル】
第3回トレーナーという仕事(初級編)
新型コロナウイルスによるスポーツへの規制も、少しずつ緩和し始めました。ゴールデンウィークも世間では10連休もあると言っておりましたが、筆者は2日でした。コロナ前では、ゴールデンウィーク中は遠征や試合、練習などで休みは無いのが当たり前。
忙しい日は午前と午後で違うチームに帯同なんてこともありました。それがコロナ禍になり、しっかり休めてしまう(現場が無い)ようになっておりましたが、今年はなんとか盛り返して来ました。
このまま、順調に以前の社会状況に戻ってくれれば良いのですが・・・。
さて、新型コロナウイルスもだいぶ落ち着いてきたようで、日本赤十字社救急法救急員(以下、日赤救急法と略します)の養成講習会も7月より再開されるとの通達が出ておりました。AT取得のための条件としても必要な資格ですが、数年開催されなかった事もあり、受講希望者が多く受講するまでが大変そうです。
スポーツの現場で生命に関わるようなトラブルが起こった際、対応を期待されるのはトレーナーです。見習いであろうが、学生であろうが『トレーナー』という肩書きでチームについている以上、緊急時にはその役割を果たさなければなりません。
そのためにも、AT取得希望かどうかに関わらず救急処置が行えるような準備は必要ですし、できれば資格を取得すべきでしょう。何か事が起こった際には頭の中はパニックになってしまうと予想されます。頭で理解しているだけですと咄嗟の時に身体を動かすこともできなくなってしまいますので、身体に憶えこませるように事前の訓練が必要となります。
日赤救急法では、胸骨圧迫・AED・止血法・三角巾・搬送・体位変換などを広く学ぶことができます。まず、日赤救急法を取得し、必要に応じてそれぞれの分野を掘り下げた資格取得にチャレンジされるのが良いのではないでしょうか。
―緊急事態に対する準備―
筆者がトレーナーとして関わっているアメリカンフットボール部では、当たりのある競技ということもあり、ベンチサイドには担架、ネックカラー、松葉杖、シーネなどが常備してあります(写真-1)。
写真-1 搬送グッズなど
トレーナールームに置いておくのでは無く、練習の度にグラウンドに出しています。また、一般的な応急処置グッズだけではなく、ヘルメットやショルダーなどの防具を外す際に必要な特殊工具や電動ドライバーなども準備してあります。グラウンド横のクラブハウス前にはAEDも配備されています(写真-2)。
写真-2 クラブハウスに設置されているAED
特にこれからの季節、外傷対策だけではなく熱中症に対する準備もしておきます。翌日の天気予報を確認し、気温や湿度が高そうな際には選手たちに練習前の水分補給の促しや、睡眠時間の確保などの通達を出します。練習時には熱中症指数計(写真-3)を確認し、その情報を指導者と共有します。
写真-3 熱中症指数計
アメリカンフットボールの場合には、ヘルメットやショルダーを装着していますので暑さ対策については神経質になります。試合時などでは新型コロナウイルスの影響もあり、サイドライン際に立っている際にはヘルメットを着用していなければならず、体熱の放散が間に合いません。そこで、小ぶりのアイスパックを作成して(写真-4)ヘルメットとショルダーの隙間に入れて少しでも熱を奪うことができるようにさせるため、トレーナーは大忙しとなります。
写真-4 氷の準備
ただし、注意しなければならないことがあり、興奮した選手は首筋にアイスパックを入れたままでフィールドに出てしまう場合もあるため、トレーナーは回収も怠らないようにしなければなりません。
当たったことによる頭部や頸部のケガにせよ、重篤な熱中症にせよ、自分たちだけでは対応できない場合も少なくありません。その際には躊躇せず救急車の要請を行う「勇気」が必要です。本当に救急車を呼んでも良いのか分からなければ対応してくれるオペレーターの方に相談すれば良いです。
「きっと大丈夫。大したことではない。」そう思い込みたくなるのも分かりますが、取り返しのつかない事態になる前に、最悪の事態を想定して行動することが大切であると考えています。
笠井整骨院 (メディカル・ハイドロバッグ研究所)
院長 笠井 浩一
【タイトル】
「関節の生理的な運動機能軸」
では今回は関節の生理的な運動機能軸について考えていきたいと思います。
関節には生理的運動機能軸が存在しこの運動機能軸が破壊されると軟組織の張力の亢進が起きると考えています。
今回は比較的わかりやすいように最初に頚胸移行部の軸について考えてみます。
まず左の2等辺三角形の図をご覧ください。
関節運動機能軸が正常であれば左右の辺は同じ長さとなり張力は同じになります、しかし支点が右方向にずれると(図1右)左右の辺の長さに変化が現れ右よりも左の辺の方が長くなります。
実際には左側は首をまっすぐ立てるだけで大きな張力を受けることになります。
これを頚胸移行部(c7/th1)に置き換えて考えると、正常時、髄核位置は椎体中央部にあり関節運動機能軸(この場合は重力軸と一致)は正常で左右の張力は均等となります。
ところが髄核が生理的範囲を超えて左側に移動した場合、頸椎7番の椎体下面は右下方に傾斜することになります。
右下方に傾斜した頸椎7番椎体下部は、胸椎1番の右横後方の鈎状突起関節に接面することになり、この部分が新たな運動支点になります。
通常の髄核支点よりも右後方に支点移動するため、左のモーメントアームが長くなり頸椎を垂直方向に維持するだけでも左側に大きな張力を発することになります。
この時、頚胸移行部を支点としてすべての皮膚、筋、筋膜、腱、神経、脈管を含むすべての左側の軟組織が牽引力を受けることになります。
このような現象は、形を変えて様々な関節に現れます。
例えば、車軸関節に分類される肘関節の腕橈関節に僅かな離開がおきたときには、その離開分だけ軟組織の総長が引き延ばされることになります。
腕撓関節付近には長撓側手根伸筋、短橈骨手根伸筋、総指伸筋、橈骨神経が走行しており腕撓関節の僅かな離開(亜脱臼状態)が生じるとこれらの筋群、神経が持続的に牽引力を受け続けることになります。
次に内側上顆炎ですが、腕尺関節は蝶番関節に分類されます。
この関節を観察するとレールと車輪のような構造に見えます。
この関節が少し脱線して前腕軸が撓側に傾くとどうなるでしょうか、撓側に傾いた分だけ今度は尺側の筋群 尺側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋、尺骨神経等に牽引力が作用して強い張力が働くことになりますね。
どの場合も、運動機能軸の異常で張力が発生すれば安静時、運動時にかかわらず24時間張力が働き続けることになり、外側上顆炎、内側上顆炎、肘部管症候群の素因となります。
その他、このような現象による軟組織の張力亢進はいたるところに現れ、障害の素因となります。
外側上顆炎、内側上顆炎はオーバーユースが原因とよく言われますが、必ずしも使用側に発症するわけではありませんね。
障害が発生するには、オーバーユース、加齢による組織の変性以前に素因として関節の運動機能軸の異常による張力亢進が潜在しているわけです。
従って外側上顆炎、内側上顆炎に施術する場合も伸筋群、屈筋群の過緊張にアプローチする前に腕橈関節、腕尺関節の運動機能軸を整復し張力の亢進を止めることが必要になりますね。
説明を簡単にまとめた動画ですのでご覧ください。
https://www.facebook.com/watch/?v=3855657534659824
次回は関節の潤滑不全や運動機能軸障害が発生するメカニズムについて考えていきたいと思います。
図表1 船越鍼灸整骨院 FUNA-INコラムより転載
シズイ労務サポート 後藤 葉子
【タイトル】
働き方改革推進支援助成金 (労働時間短縮・年休促進支援コース)ご紹介
今年は雨が多いような気がしますね。洗濯物が困った季節が早くもやってきているような気がします。
災害がおきるほど降り続くのも困りますし、なんでもほどほどがよいですね。
さて、今回紹介するのは、働き方改革推進支援助成金の「労働時間短縮・年休促進支援コース」です。
このコースは、労働生産性を向上させ「時間外労働の削減」と「年次有給休暇・特別休暇の促進に向けた環境整備」という働き方改革に取り組む事業所を支援するための助成金です。
●助成金を申請できる条件
・労災保険の適用の中小企業事業主であること
・年5日の年次有給休暇の取得に向けた就業規則等を整備していること
・交付申請時点(計画の時点)で、下記の成果目標1から4を設定するための条件を満たしていること
中小企業事業主とは、資本金または労働者数が次のいずれかに該当する企業の事業主です。
業種 | 資本(出資額) | 常時雇用する労働者 |
小売業(飲食店を含む) | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
以下の成果目標から1つ以上選択し、達成することが申請条件です。
1.36協定で時間外・休日労働時間数を縮減、所定の上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出すること
2.年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること
3.時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入すること
4.特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウィルス感染症対応のた めの休暇、不妊治療のための休暇)のいずれか1つを規定に新たに導入すること
上記に加え、「労働者の時間当たりの賃金額の引上げを3%以上または5%以上行う」という目標を追加できます。
支給対象となる取り組みは、次の中から1つ以上選択します。
・労務管理担当者に対する研修
・労働者に対する研修、周知・啓発
・外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
・就業規則・労使協定等の作成・変更
・人材確保に向けた取り組み
・労務管理用ソフトウェアの導入・更新
・労務管理用機器の導入・更新
・デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
・労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
●支給額
助成金の支給額は、取り組みの実施に要した経費の原則4分の3です。ただし、成果目標によって次の上限があります。
・成果目標1:50万円~150万円
・成果目標2:50万円
・成果目標3:25万円
・成果目標4:25万円
また、賃金額の引上げ目標を設定し目標達成した場合、引き上げ率や引き上げた人の数によって15万円から240万円の金額が加算されます。
●申請の流れ
交付申請書を最寄りの労働局へ提出(締切り11月30日)
交付決定後、提出しか計画に沿って取り組みを実施(事業実施は令和5年1月31日迄)
労働局に支給申請(事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後の日または2月10日いずれか早い日)
受 給
やってみたいけどちょっと不安、もう少し詳細を聞きたい、代行申請してほしいなどのご相談は
goto@smc.ac.jp
シズイ労務サポート後藤宛まで連絡ください。
では、また次回お会いしましょう。
全国柔道整復師連合会
田畑 興介
【タイトル】
今かかえる柔道整復療養費の問題点
今年に入ってから、社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会(以下、専門委員会)が 4 回開催(2022 年 5 月 6 日現在)されました。専門委員会設置の趣旨は「柔道整復療養費等について、療養費改定及び中・長期的な視点に立った療養費の在り方の見直しについて検討を行う」とされており、2012 年 10 月 19 日に第 1 回が開催されてから既に22 回の開催を数えております。
「中・長期的な視点に立った」という部分では、最大 3 年の実務経験と研修の受講を義務付けた施術管理者要件が決定されたのもこの専門委員会であり、施術所運営に直結する内容が議論されている場としてご理解頂けるのではないでしょうか。本年の度重なる開催は、2 年に一度、6 月 1 日に施行される施術料金改定年度ということもありますが、その他にも結論を導き出さなければならない課題が多岐にわたっているということを意味しています。
「保険者による患者ごとの償還払いへの変更」については保険者側委員による問題提起から専門委員会の議論を経て、2022 年 6 月 1 日から適用されていますが、その内容は一般の患者に対するものと自家施術に対するものに大別することができます。特に後者については柔道整復療養費に対する施術管理者の倫理観が試される側面を持っていると考えます。
自家施術の細かな定義については、他稿に譲りますが、医科においても、無診察投薬、カルテ記載の省略、一部負担金の徴収に関する疑義など様々な面で透明性が担保されにくいと捉えられているため、柔道整復療養費においても今回の改定に至っています。
仮に、行った自家施術が理由で施術管理者の関係者である患者が償還払いに変更になったとしても、療養費が使えなくなったということではありません。真に必要な施術だったのであれば、償還払いとして胸を張って患者が保険者に対し療養費を請求すればいいのです。他方、保険者による被保険者(患者)に対する償還払いへの変更が濫用される懸念が生じます。
これに関しては償還払いに変更されるまでにはかなり丁寧なプロセスを辿らなければならないことや、さらには患者ごとの償還払いへの変更が不適切に行われたと考えられる事例が発生した場合には、厚生労働省に設置された相談窓口に書面受付されることも決定しています。
いずれにしても、新設の制度であることから、厚生労働省や保険者の対応を継続して見極めていく必要がありますが、よりよい仕組みとなるよう柔道整復師側の協力も不可欠だと考えます。
「明細書の義務化(令和 4 年度施術料金改定)」については、専門委員会議論の中で、「現状の施術所の平均的人員を鑑みれば、明細書の発行に係る負担は大きく、それに見合った施術料金の改定にすべき」という施術者側委員より多くの意見が述べられたことから、明細書と料金改定を並行して議論することとなりました。
結果、明細書発行体制加算(2022 年 10月 1 日施行)が新設され、その財源を確保するため往療料の減算(2022 年 6 月 1 日施行)が決定しています。明細書発行に対して厚生労働省が打ち出した方針は「施術内容の透明化や患者への情報提供を推進するとともに、業界の健全な発展を図る観点から、患者から一部負担金を受けるときは、施術に要する費用に係る明細書を患者に交付することを義務化する」というもので、昨今の異業種を含めた商習慣を勘案すれば、断固反対という立場は専門委員として不適切でしょうし、「業界の健全な発展」と資料に謳われれば、それを望んでいない業界人は誰一人としていないでしょう。
しかし、医科のように明細書を毎回発行する人的かつ経済的余力を大多数の施術所が有していないことも事実です。これら全てを熟考しつつ多くの議論を重ねながら、結果的には「施術所への負担軽減」への配慮から明細書を毎回発行しなければならない施術所の要件は限定的なものになりました。
しかし、これで保険者側が納得してくれたわけではありません。第 22 回の専門委員会資料では、「令和 4 年度(2022 年度)に、施術所のレセコン導入状況、導入しない理由、職員数、明細書交付頻度、交付業務負担等を調査する」「令和 6 年度(2024 年度)改定において、調査結果や改定財源を踏まえ、明細書発行体制加算の算定回数、額及び明細書の義務化の対象拡大、交付回数について検討し結論を得る」としており、
さらには「併せて、その検討状況等を踏まえ、令和6 年度(2024 年度)改定において、保険者による受領委任払いの終了手続きを含めた取扱い(保険者単位の償還払いへの変更)についても検討し結論を得る」としており、すでに令和 6 年度(2024 年度)改定に併せて保険者単位の償還払いへの変更についても布石が打たれているのです。
この点でも我々の業界は試されています。今回の明細書毎回発行の要件に該当しなかった施術所におかれましても、できるだけ明細書発行にご対応頂き、来るべき令和4年度(2022年度)調査や令和 6 年度(2024 年度)改定の議論に向けて業界一丸となって、しっかり反論できる材料を積み重ねる必要があると考えます。