アールエイ姿勢均整研究会
代表 青柴 龍昇
今回のタイトルはこちら!
第7回 脊椎バイオメカニクス
今回は、上部頸椎の偏移傾向とその要因について考察してみましょう。
先ずはこの図を観察してください。
真ん中に、軸の様な形状の靭帯があり、真ん中の環椎がワッシャーの様に見えていますが
一体、環椎はどんな偏移をするのでしょうか?
カパンディー関節生理学より引用
上部頸椎の偏移には明らかな傾向が存在します。すなわち
1.環椎側方偏移は環軸関節と環椎後頭関節で同側の可能性が高い。
2.環椎回旋偏移は環軸関節と環椎後頭関節で同側の可能性が高い。
この原因が上図の靭帯構造と後頭下筋群の重力に対する拮抗作用であると考えられます。
ここでは後頭下の靭帯の構造と機能の観点から考察しましょう。
大きな頭蓋に対して小さな環椎軸椎では、質量の差が果てしなく大きく偏移しやすい部位であることは何回か前の投稿でお話いたしました。骨盤と腰椎5番も同じことが言えます。
頭蓋骨と環椎軸椎間では頭部の大きな回旋(特に環軸関節)を許しつつ、しっかりした安定性も満足しなくてはなりません。この要件にきっちり答えてくれているのが上図の解剖図に表れていますよねー。
すなわち
1.環軸関節は主に回旋運動を司り、大きな動きを許容している。
骨関節の画像診断より
環軸関節では歯突起を環椎前弓と環椎横靭帯で挟み込み歯突起を軸として回旋を許し(上図右側)外側環軸関節での大きな動きを許容しています。
2.歯突起と後頭骨を、歯尖靭帯(離開の制限)、翼状靭帯(前方移動・側方移動・回旋の制限)により結合し、頭蓋と環椎軸椎の安定を獲得しているのがわかります。
すなわち、上部頸椎と頭蓋骨の安定性は後頭骨と軸椎間の安定機構に大きく起因することがわかります。
よって、以前の投稿でもお話しましたが
環軸関節で環椎が軸椎上を大きく動けば動くほど、後頭骨は環椎上で軸椎の方へ戻ろう戻ろうとするのです。
このメカニズムが上部頸椎の偏移傾向を形成する重要な要因であります。
この靭帯構造メカニズムに、後頭下筋群が加わります。
根本的な考え方に戻りますと、
脊椎に偏移を発生させる原因の大概は、不良姿勢と外力と考えることができ、外力により生ずる偏移は、力のベクトルで決定されることになります。すなわち、方向と大きさです。
不良姿勢による偏移は、重力と筋力の拮抗作用で、非中立位で固定化されることにあります。
この小さな公式を利用し、上部頸椎の偏移を力学的観点から後頭下筋群の走行を観察しながら考えてみてください。
下図の上頭斜筋と下頭斜筋の走行を観察しますと
上頭斜筋の収縮により環椎が後方に引かれ、下頭斜筋の収縮により環椎が後方に引かれるのは理解できますし前回にありました翼状靭帯により、この牽引力が制限されようとします。
今回読んで頂いた先生方
これを機会に、上部頸椎の靭帯構造と後頭下筋群の走行を、今一度解剖を復習され上部頸椎の偏移について考えてみてください。
──────────────────────────────
カパンディー関節生理学より
笠井整骨院 (メディカル・ハイドロバッグ研究所)
院長 笠井 浩一
今回のタイトルはこちら
【手根骨関節捻挫と手根骨間の捻挫】
前回は第一中手骨基底部、大菱形骨間の異常における母指周辺の障害についてお話しましたが、今回は、他の中手骨基底部、手根骨関節捻挫と代表的な手根骨間の捻挫についてお話します。
↑図1
非常に多く見受けられるのが第2中手骨と小菱形骨間の捻挫と第3中手骨と有頭骨間の関節捻挫による異常です。『図1中①』
この2つの関節捻挫では捻挫をした当該関節部分に痛みを生じることは無く、遠位に痛みと障害を引き起こします。
患者さんがこぶしを作りにくい、手が握りにくいといった訴えをされることがよくあると思います。
この時、こぶしを作ると第二、三指が握りこめずに関節が浮いて見えることが有ると思います。
この時患者さんは二指、三指の中節骨、末節骨の背側にテンションや痛みを訴えることが多く、DIP関節部に痛みを訴える例も少なくなく、突き指と誤認されることさえ有ります。
今回は、一番多くみられる第2中手骨基底部に捻挫が起きた場合について説明します。
この時手背の第二中手骨付近を観察すると、小菱形骨間の関節部から末梢に向かって上方に反っているように見えます。
これは小菱形骨との関節間で捻挫が起こり支点にズレが生じ第二中手骨の骨軸が上方に変位していることを示唆しています。
このような変位を起こすと、第二中手骨の背側を通過する総指伸筋のラインが引き延ばされるために示指を屈曲すると背側の腱の末梢に張力が発生して屈曲障害が発生することになりこの状態が長く続くと関節の変形を誘発します。
整復法は上下からメディカル・ハイドロバッグで関節部を挟み込み加圧し、アーチを保持しつつ静水圧がかかるのを待ち、静水圧がかかった状態で中手骨を保持して小菱形骨方向に軸圧をわずかにかけて関節を潤滑安定させて、整復を完了します。
写真は第二中手骨と小菱形骨間、第三中手骨と有頭骨間で潤滑不全と骨軸の変位を生んだものですが、処置は同様に行います。
この障害の原因となりうるのが過去の転倒で手をつき、関節が不安定化したのち荷物を持つ動作等で、手指を通して長軸方向に牽引力がかかったものや、空手、拳法、ボクシング等、こぶしでものをたたく動作で中手骨に曲げの力がかかったもの、高齢者では立ち上がる際に、指から手をつき荷重する習慣のある方が反復する応力でこのような障害に陥ることが多いようです。
次は有頭骨と月状骨間での捻挫ですが、この部分の捻挫は手関節の背屈制限の原因となります。『図1中②』
手を床につく、立ち上がる時にものに手をつく動作時に痛みを訴えことが多い部位です。
有頭骨と月状骨に指をあてて手関節を背屈させていくと途中でこの部分で関節がロックするのを感じます。
また、患者に問診しても背屈時この部分に痛みや違和感を訴えることが多く、目視しても背屈時にこの部分が盛り上がるように見え関節がロックするのが観察されます。
整復法は、この部分にメディカル・ハイドロバッグを上下から巻き加圧したまま術者が整復するなど何種類かの方法は有りますが、患者さんに手をついてもらい自重で整復する方法が一番簡単で効果が高いようです。
手をつくときに、最初は遠くに手をついてもらい背屈の角度を浅くし痛みが出ないようにし、徐々に近くに手をつかせて角度を深くしていくと無理なく整復できます。
その他に有鈎骨と三角骨間の捻挫も背屈の抑制因子になりますが、整復方法は有頭骨、月状骨間の捻挫と同じです。『図1中③』
整復方法は↓から動画でご覧いただけます。