【すぐに疲れてしまう方への接し方と訓練から自主トレへの促し方】
1.疲れの定義と原因について
疲れは、これ以上、運動や仕事などの作業を続けると身体に害が及ぶという人間の生体における警報の一つです。
痛みや発熱と同じように、活動を制限するサインとしての働き(図1)があります。元科学技術庁の研究班が、「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体活動の減退状態」と定義され、日本疲労学会でも同様に定義づけられています。
原因としては様々で、自律神経が関与して、脳がダメージを受けることで疲労が起きる。活性酸素によるストレスで、神経細胞が破壊されることで起きる。
加齢や、紫外線を浴びることで疲れやすくなり、さらに睡眠障害で疲れが蓄積されることが挙げられます。
図1 生体三大アラーム
2.疲れの種類について
疲れの種類には、身体的なものと精神的なもの、そして病的なものがあります。
身体的疲労は、身体を動かし続けることで、筋肉に蓄えられていたエネルギーが枯渇し、使い過ぎることで老廃物や過労物質などが蓄積して筋肉の張りやだるさとして現れます。
精神的疲労は、緊張状態が続き、精神的ストレスが過剰にかかることで、視神経や脳が緊張することで発生します。病的な疲労とは、原疾患による疲労のことで、休息や気分転換では回復せず、治療が必要な状態を言います。
3.疲れへの対応
疲れている人に、「がんばれ」は禁句です。もう十分に頑張っている結果、活動を止めるように生体アラームが発信されている状態だからです。
疲れを取るためには休息が必要です。質の良い睡眠を取ることを先決させましょう。緊張状態にある場合には、適度に身体を動かすことも有効です。
入浴して循環を良くしたり、リラックスさせたりして副交感神経を優位な状態にして調整することも大切です。そしてバランスの良い食事を摂ることを心がけましょう。特定のストレスが原因となっている場合は、そのストレスを取り除くか、遠ざかるようにすることが重要です。
4.疾患と易疲労症状
脳損傷によって脳機能低下が生じると、精神的なエネルギーを消耗しやすく頭痛やめまい、目の痛み、姿勢の崩れが見られることがあります。
透析の方では、身体的疲労が生じて必要最低限しか活動しなくなると生活不活発病へ。また、精神的疲労によって記憶と想起がスムーズに行かず、うつ状態となる方もいます。
糖尿病では、全身倦怠感があり、高血糖では細胞内に栄養が取り込めなくなり、低血糖ではエネルギー不足となり、運動不足や睡眠不足が拍車をかけます。
神経難病では、神経が変性することで、筋肉を動かすために命令を伝える速度が遅くなり動作緩慢になったり、伝えるための物質が少なくて十分に伝わらなかったりします。
自己免疫性の神経疾患では、筋肉の脱力と易疲労性が主症状です。神経難病の代表格であるパーキンソン病では、四大徴候(静止振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害)に加えて自律神経障害や、抑うつ状態、そしてミトコンドリアの異常によってエネルギー産生機能が低下するため疲れやすい状態になります。
私たちが臨床で対応する方々は何かしらの疾患を抱えている状態です。疾患による疲れ方の違い(図2)についての理解を深めることで、運動指導に役立てていくことが大切です。
図2 疾患と疲れの種類
5.疲れに対する自主トレーニングについて
疲れについての配慮をしながら耐久力をつけて行くためには、段階的な活動プログラムが必要です。
漸増的に行うことだけでなく、生活リズムを新たに作って行くように日中活動を中心に、脳への刺激と軽い体操、そしてリラックスする時間を構成します。
なるべくルーティン化できるように心がけて、集中する活動については、必ず終わりのタイミングを決めて、過活動にならないように注意します。
家庭内での役割を持って、その役割から活動の広がりへと促していきます。ゴミ出しの役割から、部屋の片づけ、そして模様替え。洗濯をしたら、干して、取り込み、畳んで片づける。
献立作りから買い物に行き、調理して盛り付けし、食べたら後片付けまでします。役割を持つことをゴールにして、地道な体力づくりへの意欲を上げて行きます。