第2回 脊椎バイオメカニクス

今回の課題は仙腸関節で、先ずは仙腸関節の動きと軸の諸説について、カパンディー関節生理学の図を基に見ていきます。そして様々な考え方が存在する仙腸関節についての検査法について、膝上げテストに焦点を絞り、解説させていただきます。

約200年前から、仙腸関節のうなずき運動について、さまざまな説が提示されています。

後上腸骨棘やや前方を仙腸関節の回旋軸とする、Farabeuf古典的理論、また上部耳状面と下部耳状面の真ん中あたりを回旋軸とするBonnaire理論は有名ですが、必ずしもそうではないと考えておられる方が大半だと思います。

現にこの図の下は、Weiselの回転運動を基礎とする理論や、またWeiselの直線偏移運動理論があり、様々な方向と運動範囲や運動量の偏移が仙腸関節に存在することを臨床的に観察している立場からみますと、回旋軸が固定であると考えるよりも、三次元的な複合運動が生じると考えたほうが理にかなっていると思われます。

次に仙腸関節の関節面の形状に対する考え方についても様々です。

1.仙腸関節凹凸理論
2.仙腸関節は平面理論
3.仙腸関節は平面に近いが下部耳状面の寛骨凸仙骨凹でレール上に滑る。
4.仙腸関節は凹凹、凸凸、凹凸の部分がありきっちり嵌らない。

それぞれの考え方についての解説は避けますが

このような複雑な動きと軸をもつ仙腸関節に対しての検査法である膝上げテストについて、私の膝上げテストについての考え方を記させていただきます。

ステージ1

ステージ2

ステージ3

膝上げテストとは
術者は片方の母指で正中仙骨稜、もう片方の母指で後上腸骨棘におき患者の膝の挙上時に、正中仙骨稜に対する後上腸骨棘の動きをみる検査法です。

膝上げテストをする前の注意点として、踵をつけ、足先もつけるようにします。踵をつける意味は、両足を広げながらの膝上げテストは骨盤が左右にシフトし誤差につながります。

足先をつける意味は、股関節内旋です。内旋すると股関節は幾分か安定状態にあり、外旋すると、やすめ状態で不安定になる傾向にあります。

要は、誤差を少なくする意味で踵と足先をつけます。

この状態からステージ1に入ります。

膝上げテスト時の各ステージで、仙腸関節と恥骨結合の生理的な動きについて思考してみます。

生理的な動きが理解できれば異常は何かがわかるはずです。

ステージ1は、膝を上げる前段階で荷重を片方にかけた状態と理解してください。(写真は少し上げすぎです。)

荷重側の仙骨がうなずき運動すると同時に腸骨が前方に連動します。すると恥骨ももちろん連動し、前下方へ移動します。(挙上側ではこの動きの反対になると想像できます。)

挙上側での恥骨は後上方へ移動します。(写真 右下肢)

このステージ1での検査項目は恥骨のほんの少しの上下前後運動といえるのです。一言で言いますと、恥骨の検査ともいえるのがステージ1となります。

ステージ2は膝を60°くらい挙上した位置で、挙上側(写真 右下肢)での恥骨の上方への動きはすでに不可能となり、ステージ1で後上方へ移動した位置のまま軸回旋運動が生じます。すなわち恥骨結合を軸とした回旋運動となり、右寛骨の後方回旋が生じます。

このステージ2での検査項目は、寛骨の正常に後方回旋しているかであり、この時こそが正中仙骨稜に対して後上腸骨棘が、また言い換えれば、仙骨に対して寛骨が後下方に移動します。

ステージ2で、ほぼ正常な仙腸関節の場合、写真では左母指に対して右母指が下方に若干下がることになります。

ステージ3は更に90°まで挙上するのですが、ここで不思議なことに、正常な仙腸関節のみ観察できる動きが生じます。これが前方移動です。もちろん恥骨や坐骨が後方回旋する動きがみられますが、その動きに前方移動が入ります。この動きこそが、下部耳状面の凹凸の形状による滑り運動なのです。

耳状面の解剖学的な位置をみますと、下後腸骨棘から存在しており、ステージ3の角度まで挙上するや否や術者は、両母指の位置を変化させます。

片方の母指を下後腸骨棘、もう片方の母指を下後腸骨棘と同じ高さの正中仙骨稜にあて、下後腸骨棘の前方への滑り運動を触知します。

最も簡単に使用できる、膝上げテストですが、この検査一つとりましても多種の偏移を想像することができます。

私は仙腸関節の偏移を12種類に分類しました。この偏移を見つける検査法の筆頭が、ダイレクトな動きが生じる、この膝上げテストです。

膝上げテスト後、数種類の検査を行い、どのような不整合かを見極め、整合させるというのが仙腸関節に対する施術となります。

次回のテーマは、腰椎の運動学となります。

私の腰椎施術についての考え方を、披露させていただきます。

では、お楽しみに!!!

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