
笠井整骨院 (メディカル・ハイドロバッグ研究所)
院長 笠井 浩一
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「股関節骨頭の変位タイプ分類」
股関節の状態が坐骨神経痛症状にどのような影響を及ぼすのかについて考えてみましょう。
股関節には、以下の3つのパターンがあります。
- 正常パターン:臼蓋と骨頭の接点が適正な位置にある状態
- Hip-A:骨頭が前方に変位し、大腿骨軸が外旋するタイプ
- Hip-P:骨頭が後方に変位し、大腿骨軸が内旋するタイプ
それぞれのタイプがどのような筋群に影響を及ぼすのかを、骨盤の異常との関係から順を追って解説します。
骨頭変位が起こるメカニズム
Hip-Aが生じる場合(骨頭の前方変位)
腸骨が前上方に強く引き上げられると、臼蓋と骨頭の接点は下方へ引き下げられます。その結果、接点から大腿骨軸までの距離が大きくなり、大腿骨骨頭は前方へ振られてHip-Aの状態になります(図中の赤点)。
Hip-Pが生じる場合(骨頭の後方変位)
腸骨が後下方、もしくは下方に引き下げられると、臼蓋と骨頭の接点は上方へ移動します(図中の青点)。この状態では接点から大腿骨軸までの距離が短くなり、骨頭は後方へ振られることになります。
接点と大腿骨軸の距離の関係
3つのタイプ間には、以下の関係が成り立ちます。
Hip-A > 正常 > Hip-P
この関係から、Hip-Aタイプは正常よりも距離が長く、モーメントアームが大きくなることがわかります。
各タイプが及ぼす筋群への影響
Hip-Aタイプ(骨頭の前方変位)
骨頭支点が前方に移動することで、後方の筋群に緊張が生じます。具体的には以下の筋群です。
- 小殿筋・中臀筋・大殿筋
- 梨状筋
臨床上の触診でも、Hip-Aタイプに殿筋群の緊張が認められることが確認されています。
Hip-Pタイプ(骨頭の後方変位)
骨頭が後方へ移動することで、内転筋群にテンションがかかります。このタイプではパトリックテストが陽性となる傾向があります。
梨状筋症候群との関係
梨状筋症候群を起こしやすいのはHip-Aタイプです。
前述の骨盤異常に伴う第一ベースのレバーアーム現象に加えて、Hip-Aが存在すれば、高い確率で梨状筋症候群を発症させることが予測されます。一方、Hip-Pタイプで梨状筋症候群が起こることはまれであると考えられます。
Hip-Aが膝・下腿に及ぼす影響と腓骨神経症状
正常な荷重メカニズム
膝関節は荷重時に以下のように機能します。
- 膝伸展時 → 大腿骨軸が内旋
- 相対的に下腿は外旋
大腿骨内側顆と脛骨内側顆がしっかりロックすることで荷重が可能となる
Hip-Aによる下腿の過外旋
Hip-Aが存在すると大腿骨が外旋傾向になるため、通常の脛骨外旋では対応しきれなくなります。大腿骨内側顆と脛骨内側顆がしっかりロックして荷重を受けるためには、脛骨はさらに外旋する必要が生じます。
これがHip-Aによる下腿の過外旋を引き起こす機序です。
なお、高齢者はすでにAS傾向が存在することが多く、Hip-A傾向と屈曲膝傾向が合わさった状態になっているケースが多く見受けられます。
実際に、WB・股関節・膝関節をハイドロバックで整復すると、下腿の過外旋が軽減することが確認されています。
腓骨神経症状への波及
下腿が過外旋することで、総腓骨神経の経路に過剰なテンションが発生します。これが腓骨神経領域の痛みや痺れを引き起こす要因になっていると考えられます。
- まとめ
タイプ 骨頭変位方向 大腿骨軸 主な影響筋群 関連症状 Hip-A 前方 外旋 小殿筋・中臀筋・大殿筋・梨状筋 梨状筋症候群・腓骨神経症状 Hip-P 後方 内旋 内転筋群 パトリックテスト陽性 Hip-Aタイプは、骨盤の異常(レバーアーム現象)と組み合わさることで、梨状筋症候群から下腿の腓骨神経症状まで広範な神経症状を引き起こすリスクが高く、臨床上とくに注意が必要なパターンです。
次回は 足背の痺れ、足底の痺れがでる要因について考えてみましょう
軟部組織障害の関与
さらに外傷性損傷に
非荷重型損傷
が加わると、
- ハムストリングス
- 下肢後面筋群
の筋緊張が高まり、
- 軟部組織の滑走障害
- 組織癒着
が生じやすくなります。
臨床上の重要なポイント
坐骨神経痛を考える際、
骨盤と腰仙移行部の異常が
基底に存在していることを忘れてはなりません。
しかし実際の臨床では、
- 左右で異なる損傷
- 複数の関節障害
を同時に抱えていることが多く、
正確な判定と整復は非常に難しい
と言えます。






