【メディカル・ハイドロバッグの骨盤整復法】
ここからは、メディカル・ハイドロバッグを使用した骨盤整復法について解説いたします。
仙腸関節の機能と役割ですが、重力定量機、歩行における重要な推進機構、等様々な重要な機能を有していますが、内容が難解で有り、私には解説できませんので。
ここではメディカル・ハイドロバッグを使用した整復に必要な事柄を簡潔に解説し、
吉田勧持先生の著書,構造医学の原理、構造医学の臨床、構造医学解析Ⅰを精読され、御理解を深められることをお勧めいたします。
仙腸関節は動関節か?不動関節か?という議論はいまだに続いています。私は、不動関節ではなく動関節であると認識しています。
では、何故人によってこれ程認識に違いがあるのでしょうか?
それは、仙腸関節が一定の条件下でしか動かない関節であるからです。
ですからその条件下で観察すれば動関節、条件下でなければ不動関節と観察してしまいます。
では、その条件とは何でしょうか?
仙腸関節は内部に細かい凹凸がある平面関節で有るとされ、肩関節や、股関節のようなボールアンドソケットのような構造にはなっていません。
これをもって不適合関節、出来損ない関節と言われます。
また、可動域もほかの関節のように大きくないため、その動きを確認することは少し難しいようです。しかしながら、 PSIS、 と仙骨に指をあてて歩けば、動きに合わせて仙腸関節が可動していることはご自分の歩行でも確認できます。
しかし、臥位では、仙腸関節の動きを確認することはかなり困難になります。
これは仙腸関節が人体の中で中心を成しバランスを取り重力を定量するために関節内に重力に対抗する機構を兼ね備えており、重力が充分かからないと可動できない構造になっているためです。
そうです、仙腸関節が可動する条件とは関節面に対する十分な荷重という事になります。
それが、仙腸関節の内部にある細かい凹凸が持つ意味でもあります、通常適合した関節というのはボールアンドソケットもしくは関節面の凹に対せて、関節面が凸と考えがちですが仙腸関節においては凹面、に対して凹面の関節が対応しています。
この形状は一見不適合関節に見えますが、実は関節液の保持、関節の圧力流体形成、関節内圧の上昇を起こさせるためには最も適した組み合わせとなります。
仙腸関節は人体最大の荷重関節で有り、重力定量機であるがために他の関節面に無い特殊な形状に至っています。
荷重をかけると仙腸関節は動く!このことを私達は小鹿の解剖において確認しております。小鹿においても非荷重時には関節は動きませんが、両側から押圧すると関節は滑るように動き出します。
また、仙腸関節の関節面は120°で分立されたテーパージョイントになっており重力の定量、上半身から下半身への重力の伝達がスムーズにできる形状になっています。
上体と、下肢のバランスを取り、歩行においては、腸骨がはずみ車の役割を果たし歩行の安定効率化を達成しています。
はずみ車(フライホイールflywheelとも。主として回転体の速度変動などを小さくするために用いられる回転体。大きな慣性モーメントをもつ。内燃機関などでは発生するトルクが1回転中に変動し,プレス,空気圧縮機などでは負荷が周期的に変動する。これらの変動を吸収し回転をなめらかにするため,はずみ車を軸に取り付ける。)マイペディアより
歩行の場合、骨盤が上下重力方向の力を腸骨のはずみ車の機能で歩行推進力に変換し、ジャイロ効果で横軸を得て、正確な前方軸を規定していると考えられます。
そして仙腸関節が、生活習慣、スポーツ、外傷で損壊するとこの機構が壊れ、特徴的な歩行が現出します。
まずはASについて解説します。ASとは Anterior Superior 前上方の略で腸骨耳状面が仙骨耳状面に対して前上方に離開したことを指します。
立位で骨盤が前方に傾斜している、後方に傾斜しているというものとは意味が違いますのでご注意ください。
仙腸関節が前方へ離開、もしくは後方へ噛みこんだ場合、全体重心を調整するために腸骨、仙骨の位置の異常を持ったまま、前方へ回転したり後方へ回転したりします。
したがって、見た目だけでは骨盤の正確な判定はできません。
では、どのようにして AS前上方離開が発生するのかについて次回解説させていただきます。