腱板のエコー観察
今月は「腱板の超音波観察法」についてお話ししたいと思います。
超音波を始めたばかりの人は苦手意識を持つ部位の一つかもしれません。
エコー観察により腱板断裂、腱板炎、肩峰下滑液包炎、石灰沈着、上腕二頭筋長頭腱炎など痛みや機能障害の評価をより的確に行うことができます。
基本姿位
肩関節の場合、内外旋運動や外転運動のような自然な肩の動きの動態観察する事を想定すると、肩関節の超音波観察の基本肢位は座位が良いと思います。
棘上筋・棘下筋の観察肢位は、手を鼠蹊部において脇を軽く締めた姿勢で腱板を肩峰から引き出した状態で行います。(肩関節軽度伸展位)
棘上筋・棘下筋の観察
結節間溝を触知して、大結節の山にプローブを合わせます。
腱板の線維構造が描出されたら、大結節の付着の際(きわ)から後方に向かって、プローブをほぼ平行移動させて観察します。
この時に、腱板は末梢に向かって前額面に約30度に傾いている事を考慮に入れて、線維構造がきれいに描出されるようにプローブの角度を少しピポットさせて前後左右に微調整してください。
図1 プローブ走査
右上腕骨を上から見ると、それぞれの腱の付着面(facet)があります。
図2 上腕骨
超音波で観ると付着面の形状はそれぞれ、SF : superior facet 、MF : middle facet、 IF : inferior facetと呼ばれています。
おおまかにSFには棘上筋、MFには棘下筋、IFには小円筋が付着しています。この付着面を目印にすることによって、それぞれの腱を区別できます。
また棘下筋は棘上筋後方を上方から覆いかぶさるように存在しています。
図3 SF・MF付着部画像
SFは上腕骨骨頭が山のように盛り上がった形をしており、後方のMFに向かうとなだらかな形に変わってゆきます。
観察のポイント
棘上筋腱の超音波長軸走査での腱板断裂を疑う場合の観察ポイントです。
1腱自体のフィブリラパターン
2腱板の付着位置であるfacet部分の不整の有無
3腱板上部のPeribursal fatが正常な丸いドーム型をしているか
以上の3点と併せて、
石灰性腱炎(腱板内部での高エコー像)、肩峰下滑液包の水腫の有無なども確認して下さい。
この時、石灰像は棘上筋から棘下筋への移行部に認める場合が多いと言われています。
また、肩峰下滑液包の水腫に関しては、プローブで圧迫しすぎると見落とす可能性があります。
運動器の超音波観察は、健側から行い正常像の把握をして下さい。健側の把握ができていれば、異常箇所の確認に役立ちます。日常的にも正常像をたくさん見て訓練することが大切です。
超音波で腱板の運動器検診を50歳以上の健康な成人に実施したところ、『約1/4に腱板完全・部分断裂が存在したそうです。しかし、その約2/3には自覚症状がない。』という驚きの結果であったそうです。
つまり腱板断裂自体が必ずしも痛みや機能障害の原因とは限らないと言え、超音波観察は肩の障害の原因究明に有用と言えます。
超音波による観察は簡便にリスクなく行えることから、柔整にとって強力な武器になると考えられます。
株式会社エス・エス・ビー
営業企画本部 青木崇晶