第3回 簡単な腰椎のバイオメカニクス

前回に続きまして、
今回は腰椎の簡単な運動学について語らせて頂きます。

仙腸関節の私の応用理論は秋以降にご紹介させて頂きます。

脊椎全体を診て、
一体どこが偏移を起こしやすい部位といえるのでしょうか?

私はこう考えます。

1.質量の差が大きい部位
2.生理運動の差が大きい部位
3.彎曲の頂点

質量の差が大きい部位とは、頭蓋骨と上部頸椎、骨盤と腰椎4番5番ということになるでしょう。

生理運動の差が大きい部位とは、回旋運動に対応している胸椎と回旋運動に対応していない腰椎の間、すなわち胸腰移行部、がっちりとした胸郭で安定度を得ている上部胸椎と頸椎の間、すなわち頸胸移行部ということになるでしょう。

彎曲の頂点という考え方は、例えば右凸の弧があり、その下に連続した左凸の弧があると想像してみてください。

竹ヒゴをグーッと曲げて見られるのもいいかと思います。

腰椎が左凸で胸椎が右凸としますと、胸椎は重力の作用でもっともっと右凸を作りたい力が常に働いています。

(実際は筋力がこの重力に対抗します)

そして胸椎は、一固まりの物体として腰椎に乗りかかることにより、胸腰移行部に偏移点ができ側屈偏移が生じ、胸椎の彎曲の頂点も偏移が生じるという考え方です。(前額面側屈偏移の可能)

要するに、内臓系を考慮しない脊椎偏移は、概ね決まった部位が偏移を起こしやすいと言えます。

それでは本題に入らせていただきます。

腰椎の主な運動は、軸方向の圧迫、軸方向の伸展、屈曲、伸展、回旋、側屈、側方であり水平面移動である回旋、側方は純粋な運動として起こりません。
腰椎の関節面は矢状面状に近く、矢状面状の奥には前額面状の関節面も存在するという形状上、屈曲、伸展運動に適しており、今回は屈曲運動について思考してみましょう。
(回旋運動は少ないとされていますが、関節軟骨の水の吸水により片側3°までとする生化学的な考え方が妥当)

(カパンディー関節生理学 脊椎編より)

腰椎全体としての屈曲・伸展可動域は年齢により差がありますが、屈曲40°伸展30°程度が代表的な数字です。

また上図から、35歳~49歳の年齢層では、腰椎4,5間が最も屈曲可動域が大きくなっています。

これは腰椎椎間板ヘルニア多発地帯と同部位で、屈曲動作が腰椎椎間板ヘルニアへの影響が伺えます。

今度は分節屈曲・伸展運動についてまとめてみましょう。

(カパンディー関節生理学 脊椎編より)

1.屈曲運動  ①椎間関節は開き、接触面積減少
       ②髄核後方圧
       ③黄色靭帯、棘間靭帯伸長

2.伸展運動  ①椎間関節は閉じ、接触面積増加し安定位
       ②髄核前方圧
       ③前縦靭帯伸長

髄核の移動に着目しますと、後方移動しやすく、前方移動しにくいのです。これは線維輪の前後の構造上の違いがあり、後方は弱い線維構造となっているのです。(詳しくは生化学の領域です)

要するに、前かがみで体幹を屈曲すると、髄核は後方圧移動しやすく、体幹を伸展すると、髄核前方圧移動しにくいと考えられているのです。

次に腸腰靭帯について思考してみましょう。

(カパンディー関節生理学 脊椎編より)

(カパンディー関節生理学 脊椎編より)

仙骨を矢状面で観察しますと、自然位に前下方に傾斜し、立位での仙骨の水平面に対する角度は約40°といわれています。

標準的な40°の腰仙角では、L5S1連結部における前方剪断力は、上半身の体重の64%に相当します。(sin40°)

この剪断力に対抗し、腰仙関節椎間関節の矢状面状に対する前額面状の要素増大という骨性抵抗と、腸腰靭帯による下部腰椎と骨盤の強い連結により、安定化されています。

さてこの腸腰靭帯はどのような役割を担っているかについて思考してみましょう。

腸腰靭帯は上方線維束と下方線維束が存在します。もちろん線維形状は入り乱れていますが、大きく分けると、この二つであるといえます。

上方線維束に着目してみましょう。

上方線維束はL4と骨盤を連結させており(上図 赤色ベクトル)、この役割について考えてみましょう。

1.前方移動を防いでいるかも
2.上方移動を防いでいるかも
3.後方へ行かそうとしているかも
4.剪断力緩衝装置かも
5.腰椎前彎に寄与しているかも

この5点が、上図赤色ベクトル(矢印の方向は上図にはありませんがベクトルと表現します)で観察できます。

さてここで腰椎椎間板ヘルニアの多発地帯が、腰椎4番5番の椎間板であることを思い出してください。

例えば、前にある植木鉢を移動するために、体幹を前屈させ腰椎を屈曲させたとしましょう。

大きく屈曲していくと同時に、腰椎4番から骨盤に繋ぎとめている上部線維束が腰椎4番の前方移動を防ぐと同時に若干の後方移動させる力がはたらきます。(上図赤色ベクトル後方分力)

この力が腰椎5番に伝達され前方移動を防ぎます。

となりますと上方線維束が腰椎4番の屈曲しようとする力を緩衝しているとも考えられます。

体幹を前屈させ、腰椎を屈曲したとき、腰椎4番5番の椎間板で屈曲が一番大きいのは、この上方線維束の仕業なのです。

腰椎運動学はこの他に、相当な理論があります。

私は今回お伝えした内容の上方線維束を応用し、4種類の独自の偏移を作成しています。

簡単に申しますと、

・髄核運動支点喪失パターン
・髄核球形維持パターン
・椎間関節パターン
・癒着パターン

私の理論が知りたい方は、青柴セミナーに来てください!

今年は東京、横浜、名古屋、三重合宿、大阪、博多に出没する予定です!!

次回は胸椎胸郭バイオメカニクスをご紹介します。

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