【肘の障害】

 では今回から肘の障害についてお話します。

肘の障害でよく問題とされるのがいわゆるテニス肘、(外側上顆炎)と野球肘(内側上顆炎)ですね。

今回はまず外側上顆炎について解説していきます。

一般に外側上顆炎は手関節を背屈する動作の多いスポーツなどによるオーバーユースや、手関節を背屈する、背屈位で荷物を持ち上げる等の日常生活動作、職業動作などで誘発されるとされています。

長橈骨手根伸筋、短橈骨手根伸筋、総指伸筋の緊張により腱の付着部に牽引力がかかり炎症を持ち、長期間その状態が続くと仮骨が形成されるようになりますが、一般的に安静時痛を出すことは少ないとされています。

今までの連載でもたびたび書いていますが、オーバーユースや加齢だけが原因で障害に陥るのでは有りません

このような障害には関節の障害(捻挫)が介在しているということです。

ではこの場合どのような関節障害(捻挫)が介在しているのでしょう?

図をご覧ください、

長橈側手根伸筋、起始 停止第二中手骨底

短橈側手根伸筋、起始 停止第三中手骨底

総指伸筋 起始 上腕骨の外側上顆、外側側副靭帯、前腕筋膜 停止第2〜5指の中節骨底及び末節骨底 

これらの筋群は全て腕橈関節上を通過します、腕橈関節の異常がこれらの筋群に影響をもたらすことは容易に想像がつきますね。

腕橈関節は橈骨頭と上腕骨小頭間で形成され、橈骨頭が輪状靱帯ですっぽり覆われている構造になっています。

この状態から、橈骨頭がわずかに亜脱臼したような状態になると小児の場合肘内障となり大きな機能障害を起こします。

成人の場合小児ほどの機能障害は起きないのですが、上腕骨小頭と橈骨頭間の距離が伸びた分だけその上を走る筋群の総長は伸びることになりますので筋群に牽引力が働くことになります。

つまり腕を使っていても、使っていなくても24時間常に張力が働き続けているわけです。この状態で仕事やスポーツで手関節の背屈を伴う運動をし続けて初めて外側上顆炎が発症するのです。

オーバーユースだけで発生するわけでは有りません。

また、外側上顆炎は橈骨手根筋群や、総指伸筋の牽引で発生していますので基本的にストレッチは逆効果と考えます。

短期的に効果が有っても、長期的には障害を強くする可能性が有りますね。

それでは、外側上顆炎の判定についてお話します。

一般的には1.Thomsen(トムセン)テスト、2. Chairテスト、3. 中指伸展テストで疼痛を誘発して調べますが、ここでは腕橈関節の関節障害(捻挫)の有無について調べます。

写真のように手のひらを上にして本(ある程度の重量のもの)を載せます。

この状態で本を上に持ち上げるように肘を伸展します。

腕橈関節に障害(捻挫)があるとこの動きがスムーズに行えません。

では整復法動画です。

患者の自動運動を介助して行います。

1、患者姿位 肘関節伸展回外位にとります。

2、橈骨頭にハイドロバックを当てて、母指で軽く押圧します。

3、対手で前腕橈骨を保持し僅かに軸圧をかけ、静水圧がかかるのを待ちます。

4、ハイドロバッグを当てたまま、屈曲回内位に誘導します。

5、再び伸展回外位に誘導し、この運動を数回繰り返します。

6,先程のテストで運動の改善を確認します。

この時決して強い力を加えてはいけません、保持する程度の力で患者さんの自動運動を介助して行います。

特に、橈骨の軸圧を強くしてしまうと前腕骨軸が撓屈してしまうために内側上顆炎を引き起こしてしまうことが有るため、保持する程度の力で整復することが重要です。

整復後、テーピングやアイシングなど必要な処置をします。

外側上顆炎は基本的には安静時痛が出ることが少ないのですが、強い安静時痛や夜間痛を伴うことが有りますね、これは腕橈関節の異常に加えて頚胸移行部(C7/Th1間)に異常を生じたときに発生します。

頚胸移行部の異常で腕神経叢の牽引を生じると、それだけでも強い痛みを発生することとなり安静時痛、夜間時痛につながります、詳しいことは頸部の異常の解説時にお伝えします。

橈骨神経は肘の付近で上腕筋と腕橈骨筋で挟まれた橈骨神経管、回外筋のフローセ弓の神経絞扼の起きやすい部位を通過しますのでこの部分での障害も考慮する必要がありますね。

動画はこちらからご覧になれます。

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