【疾患別の特徴の捉え方と訓練の進め方(慢性関節リウマチ)】

1.慢性関節リウマチについて

 全身の関節に炎症が広がり、手足の関節に腫れや痛みを伴う病気です。関節が痛くて動かせなくなり、生活に支障を来たします。

病気に罹る男女比は1対4で女性に多く、30~40歳代に多く発症します。原因としては、外敵から身体を守る免疫機能(図1)が自分を攻撃してしまう免疫異常による全身性に慢性に進行する疾患ですが、なぜ起こるかまでははっきりと解明されていません。

症状としては、微熱が続き、全身の様々な臓器に炎症が起きます。そして朝の手足のこわばり、関節痛が起きます。小さな関節が破壊され脱臼変形していきます。その結果、関節が動かずに筋肉を動かすことが出来ず、筋力低下も起こして行きます。

図1 免疫のはたらき

2.慢性関節リウマチを罹患した方の心理について

 炎症と鎮静を繰り返しながら、身体(主に関節)が破壊されていく状況にあります。沈静している際に、不意に身体を動かしたり、無理な動きをかけたりした際に、炎症が再燃して耐え難い痛みが生じます。

そのような状態では、身体を動かすことに消極的になり、あるいはとても神経質になって、痛みが生じない範囲しか動かさなくなります

ベッド上に置く箱ティッシュの位置などを細かく指示したりすることは、自分でティッシュを取る際に、手首や指に負担をかけない位置で再燃を予防しています。周囲に対して神経質な振る舞いになることから「リウマチ気質」とも言われています。

3.ベッド上での訓練をする際の注意点

 関節破壊を再燃させるきっかけとならないように、大きな関節(股関節や肩関節)をゆっくり動かすことから始めて行きます。

その時に、余計な力が末梢関節に及ばないように、腕全体または下肢全体をしっかり支えながら、皮膚も掴まず面で接して負担を少なくすることを心がけます。そのような触れ方や支え方をしていることを説明しながら行うと安心感を与えるため効果的です。

破壊されている関節周囲への刺激は避けて、隣接する筋肉に対して直接伸ばし、圧迫することで循環改善を促します。起き上がりを介助する場合にも、電動ベッドの機能を活用して、身体への無理をさせず滑らかな動作を介助して、特定の関節に負担がかからないような配慮をします。

起き上がる際、座位姿勢、立位・歩行介助などの重力の影響を考慮する際には、特に首の関節である環軸関節の脱臼・骨折を起こさないように細心の注意が必要です。

4.動作訓練をする際の注意点

 関節の破壊が進むと、筋肉は大きな力を発揮することが出来なくなるため、筋力強化ではなく環境を工夫して、関節への負担を少なくするように考えます。

ドアの開け閉めなどでは、指や手首でドアノブやレバーを掴むのではなく、引き戸にして肘や腕全体を使って行うようにしたり、ドアレバーの長さを延長させたり空間を広げたりして大きな関節を使うような工夫をします。

立位保持や立ちすわりなど、大きな関節を動かす運動や、関節を動かさずに筋肉を収縮させる運動などを中心に行います。特に転倒には注意し、首への負担がかからないように、ネックカラーの装着などで予防します。

5.生活環境の工夫について

 生活動作全般を考えてみると、ドアの開閉、鍵の開閉、便器の蓋の開閉、タンスや机の引き出しを開ける時など、日常的な行為の中で指を使うことが多いです。

便器の蓋はセンサーで感知して自動開閉機能を活用し、鍵はオートロックや顔認証などの非接触システムを利用、ドアの開閉などの物理的に必要な動作については取っ手の工夫が必須となり、引き出しについては、押すことで飛び出してくるなど構造的な工夫をすることで、指を使わなくても開閉が出来るようになります。

最新の福祉機器を駆使して、暮らしやすさを考え続けることが大切です。

6.慢性関節リウマチを患っている方への接し方について

 専門職として関わる前に、人としての受け止めが出来るように、相手の状況を正しく理解して接することが大切です。

特に身体に触れる際には、信頼関係が樹立されるまでは疑い深く、スムーズな接し方が困難な時期があるので、関連用語(図2)を知り、時間をかけて信用を得ていくことが重要となります。

図2 慢性関節リウマチの関連用語

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