今かかえる柔道整復療養費の問題点

今年に入ってから、社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会(以下、専門委員会)が 4 回開催(2022 年 5 月 6 日現在)されました。専門委員会設置の趣旨は「柔道整復療養費等について、療養費改定及び中・長期的な視点に立った療養費の在り方の見直しについて検討を行う」とされており、2012 年 10 月 19 日に第 1 回が開催されてから既に22 回の開催を数えております。

「中・長期的な視点に立った」という部分では、最大 3 年の実務経験と研修の受講を義務付けた施術管理者要件が決定されたのもこの専門委員会であり、施術所運営に直結する内容が議論されている場としてご理解頂けるのではないでしょうか。本年の度重なる開催は、2 年に一度、6 月 1 日に施行される施術料金改定年度ということもありますが、その他にも結論を導き出さなければならない課題が多岐にわたっているということを意味しています。

「保険者による患者ごとの償還払いへの変更」については保険者側委員による問題提起から専門委員会の議論を経て、2022 年 6 月 1 日から適用されていますが、その内容は一般の患者に対するものと自家施術に対するものに大別することができます。特に後者については柔道整復療養費に対する施術管理者の倫理観が試される側面を持っていると考えます。

自家施術の細かな定義については、他稿に譲りますが、医科においても、無診察投薬、カルテ記載の省略、一部負担金の徴収に関する疑義など様々な面で透明性が担保されにくいと捉えられているため、柔道整復療養費においても今回の改定に至っています。

仮に、行った自家施術が理由で施術管理者の関係者である患者が償還払いに変更になったとしても、療養費が使えなくなったということではありません。真に必要な施術だったのであれば、償還払いとして胸を張って患者が保険者に対し療養費を請求すればいいのです。他方、保険者による被保険者(患者)に対する償還払いへの変更が濫用される懸念が生じます。

これに関しては償還払いに変更されるまでにはかなり丁寧なプロセスを辿らなければならないことや、さらには患者ごとの償還払いへの変更が不適切に行われたと考えられる事例が発生した場合には、厚生労働省に設置された相談窓口に書面受付されることも決定しています。

いずれにしても、新設の制度であることから、厚生労働省や保険者の対応を継続して見極めていく必要がありますが、よりよい仕組みとなるよう柔道整復師側の協力も不可欠だと考えます。

「明細書の義務化(令和 4 年度施術料金改定)」については、専門委員会議論の中で、「現状の施術所の平均的人員を鑑みれば、明細書の発行に係る負担は大きく、それに見合った施術料金の改定にすべき」という施術者側委員より多くの意見が述べられたことから、明細書と料金改定を並行して議論することとなりました。

結果、明細書発行体制加算(2022 年 10月 1 日施行)が新設され、その財源を確保するため往療料の減算(2022 年 6 月 1 日施行)が決定しています。明細書発行に対して厚生労働省が打ち出した方針は「施術内容の透明化や患者への情報提供を推進するとともに、業界の健全な発展を図る観点から、患者から一部負担金を受けるときは、施術に要する費用に係る明細書を患者に交付することを義務化する」というもので、昨今の異業種を含めた商習慣を勘案すれば、断固反対という立場は専門委員として不適切でしょうし、「業界の健全な発展」と資料に謳われれば、それを望んでいない業界人は誰一人としていないでしょう。

しかし、医科のように明細書を毎回発行する人的かつ経済的余力を大多数の施術所が有していないことも事実です。これら全てを熟考しつつ多くの議論を重ねながら、結果的には「施術所への負担軽減」への配慮から明細書を毎回発行しなければならない施術所の要件は限定的なものになりました。

しかし、これで保険者側が納得してくれたわけではありません。第 22 回の専門委員会資料では、「令和 4 年度(2022 年度)に、施術所のレセコン導入状況、導入しない理由、職員数、明細書交付頻度、交付業務負担等を調査する」「令和 6 年度(2024 年度)改定において、調査結果や改定財源を踏まえ、明細書発行体制加算の算定回数、額及び明細書の義務化の対象拡大、交付回数について検討し結論を得る」としており、

さらには「併せて、その検討状況等を踏まえ、令和6 年度(2024 年度)改定において、保険者による受領委任払いの終了手続きを含めた取扱い(保険者単位の償還払いへの変更)についても検討し結論を得る」としており、すでに令和 6 年度(2024 年度)改定に併せて保険者単位の償還払いへの変更についても布石が打たれているのです。

 この点でも我々の業界は試されています。今回の明細書毎回発行の要件に該当しなかった施術所におかれましても、できるだけ明細書発行にご対応頂き、来るべき令和4年度(2022年度)調査や令和 6 年度(2024 年度)改定の議論に向けて業界一丸となって、しっかり反論できる材料を積み重ねる必要があると考えます。

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